陸上10000メートルは、トラックで行われる種目の中で最も長い距離を走る競技だ。長距離は複数の種目で活躍する選手も珍しくなく、近年の10000メートルで主要タイトルを総なめにしてきたモハメド・ファラーがマラソンでも好成績を残すなど、他の長距離種目で活躍する選手も少なくない。
マラソン日本記録保持者の大迫傑はリオ五輪で10000メートルに出場
10000メートルは、1周400メートルのトラックを25周走り、最も早くゴールにたどり着いた選手が勝つというシンプルな競技。トラック種目の中では最も距離が長く、現在マラソン日本記録を持つ大迫傑もリオ五輪では10000メートルに出場しているように、マラソンとの親和性は高い。
各選手に専用のレーンは割り当てられておらず、スタートからゴールまでオープンレーンで走ることになる。先頭の選手が最後の1周に入ると鐘が鳴らされ、各選手はスパートに入る。
他の長距離種目同様、10000メートルもショートカットなどの違反行為が行われていないか、監視員が目を光らせている。明らかな違反行為があったときは黄色のフラッグを掲げられ、選手の失格を判定する権利を持つ審判長に判断を行う。
東京五輪出場権獲得には他の長距離種目と同じく、以下の2つのルートが設けられている。
・世界ランキングにおいて上位にエントリーされること
・IAAFが定める参加標準記録以内のタイムを出すこと
東京五輪出場権獲得のために参考となるのは、2019年1月1日~2020年6月29日の間に出した記録のみ。同一種目への出場は、各国・各地域で最大3人に限られており、同一国内・地域内に4人以上の出場資格を持つ選手がいるときは、それぞれの国や地域で選考会を開き、選考が行われる。
10000メートルとマラソンのどちらでもトップレベルの選手も
10000メートルの世界記録上位は、男女ともにエチオピアやケニア、モロッコなどのアフリカの選手が多数を占めているのが現状だ。
2018年2月時点で、男子10000メートルの世界記録はエチオピアのケニネサ・ベケレが2005年8月26日に出した26分17秒53。なお、ケニネサ・ベケレは5000メートルの世界記録保持者でもあり、さらにマラソンで2016年9月に行われたベルリンマラソンで歴代3位となる2時間3分3秒という記録を出している。まさに、”史上最強のトラックランナー”と言える存在だ。
しかし、リオ五輪を制したのはイギリスのモハメド・ファラーだった。なお、ファラーは5000メートルでも金メダルを獲得しており、5000メートルと10000メートルで五輪連覇を達成した。こちらもスーパースターと呼ぶべき選手である。
そんなファラーは2017年世界陸上でも10000メートルを制すと、トラック競技からの引退を表明。マラソンに転向すると、2018年10月に行われたシカゴ・マラソンで優勝するなど着実に結果を残している。
日本勢は東京五輪で上位に食い込むことができるか?
1万メートルの日本記録は2015年11月28日に村山紘太が出した27分29秒69となっている。
リオ五輪では、大迫傑がメダル圏と約45秒差の17位。設楽悠太と村山紘太がそれぞれ、29,30位だった。大迫は東京五輪に向けて専念すると見られており、今後の動きに注目だ。
女子10000メートルの世界記録は、エチオピアのアルマズ・アヤナがリオ五輪で樹立した29分17秒45となっている。なお、5000メートルで金メダルを獲得したケニアのビビアン・チェルイヨットが銀メダルを獲得している。
日本記録は、2002年5月3日に渋井陽子が出した30分48秒89。リオ五輪には高島由香、関根花観、鈴木亜由子の3選手がエントリーし、5000メートルにもエントリーしていた鈴木は欠場したものの、高島は18位、関根は20位という結果を残した。
日本勢はホームアドバンテージを生かすことができれば、東京五輪で上位入賞、あるいはメダルを狙うポテンシャルを持っているといえるだろう。