かつては中国をはじめとする世界の強豪になかなか勝てなかった日本のバドミントン。しかし、選手育成面での改革が功を奏し、次第に成果が出始めている。特に女子ダブルスではその傾向が顕著で、2008年北京五輪4位、2012年ロンドン五輪銀メダル、そして、2016年リオデジャネイロ五輪で初めての金メダルを獲得した。また、2018年、中国・南京で開催された世界選手権では、日本勢が史上最多となる6個のメダルを獲得した。なかでも女子ダブルスは、日本のペアが金・銀・銅のメダルを獲得、表彰台を独占し、世界のバドミントン界に大きな衝撃を与えた。2020年東京五輪への期待は高まるばかりだ。
リオデジャネイロ五輪で金メダルの快挙
バドミントンがオリンピック競技になったのは1992年バルセロナ五輪からだ。これまで7大会が行われたが、2008年北京五輪まで日本代表がメダルを獲得したことはなかった。ところが、長年かけて取り組んできた選手育成などの強化策が奏功する。2010年代に入り、2012年ロンドン五輪で藤井瑞希・垣岩令佳の “フジカキ”ペアが銀メダルを獲得、2016年リオデジャネイロ五輪で高橋礼華・松友美佐紀の “タカマツ”ペアが悲願だった日本初の金メダルを勝ち取った。
バドミントン女子の黄金期
実は1960〜1970年代、日本の女子選手は世界の大舞台で大活躍していた。当時、世界最高峰とされていた全英オープンの女子ダブルスで、高木紀子・天野博江ペアが1968年、1969年の2年連続で準優勝を果たすと。1971年に高木紀子・湯木博恵ペアが優勝したのを皮切りに、相沢マチ子・竹中悦子ペア、栂野尾(旧姓竹中)悦子・植野恵美子ペア、徳田敦子・高田幹子ペアと、日本のペアが1978年まで6大会連続で優勝している。
男子シングルスの元エース田児賢一選手の母である米倉よし子は植野恵美子や徳田敦子とペアを組み、1978年と1980年に準優勝している。また、1977年にスウェーデンで開催された第1回世界選手権の女子ダブルスで、栂野尾悦子・植野恵美子ペアが優勝している。世界選手権で日本代表が再び優勝したのは41年後、2018年に永原和可那・松本麻佑選手ペアまで待たなければならなかった。
また、バルセロナ五輪日本代表で現在スポーツキャスターなどを務めている陣内貴美子や、「オグシオ」の愛称で親しまれた小椋久美子・潮田玲子ペアなど記憶に残る選手も女子バドミントンには多い。
注目ペアは「フクヒロ」「タカマツ」「ナガマツ」
2018年12月に発表された世界ランキングで50位以内に入っているペアは、福島由紀・廣田彩花ペア1位、髙橋礼華・松友美佐紀ペア2位、永原和可那・松本麻佑ペア3位、田中志穂・米元小春ペア6位、櫻本絢子・髙畑祐紀子ペア10位、松山奈未・志田千陽ペア14位、福万尚子・輿猶くるみ16位、新玉美郷・渡辺あかね26位の8組だ。世界ランキングの1位、2位、3位を独占し、ベストテンに5組が占めている点は特筆すべきことだろう。
同じく日本バトミントン協会が12月に発表した日本ランキングは、福島由紀・廣田彩花ペア1位、松友美佐紀・髙橋礼華ペア2位、松本麻佑・永原和可那3位、田中志穂・米元小春4位、髙橋礼華・東野有紗5位、櫻本絢子・髙畑祐紀子5位、福万尚子・輿猶くるみ6位、松山奈未・志田千陽7位、栗原文音・篠谷菜留8位、新玉美郷・渡辺あかね9位、篠谷菜留・星千智10位、栗原文音・東野有紗10位、東野有紗・中西貴映10位となっている。
2019年の日本代表選手に内定しているのは、新玉美郷・渡邉あかねペア、櫻本絢子・髙畑祐紀子ペア、志田千陽・松山奈未ペア、髙橋礼華・松友美佐紀ペア、永原和可那・松本麻佑ペア、福島由紀・廣田彩花ペア、米元小春・田中志穂ペアの7組(2018年12月11日に正式決定)だ。
東京五輪の国・地域別出場枠は、各種目ともに最大2枠で、シングルス、ダブルスともにランク上位の2人(2組)しか切符は手にできない。それを決めるのは2020年4月末のランキングとなっている。世界ランキングのポイントは直近1年間で集計するので、本当の競争が始まるのは2019年5月ということになる。
注目ペアは世界ランキング上位3組だろう。1位の福島由紀・廣田彩花ペア、2位の松友美佐紀・髙橋礼華ペア、3位の松本麻佑・永原和可那ペアは、それぞれの選手の名前から「フクヒロ」「タカマツ」「ナガマツ」ペアと呼ばれている。この3組の実力は拮抗していて、世界ランキング3位ながら、“ナガマツ”ペアは、2018年、中国・南京で開催された世界選手権で、2016年リオデジャネイロ五輪の覇者“タカマツ”ペアを3回戦で破り、決勝で“フクヒロ”ペアを退けて優勝している。しかし、12月の全日本総合選手権では、ナガマツ”ペア、“タカマツ”ペアを退けて、“フクヒロ”ペアが2年連続優勝を達成した。
中国の牙城に迫る日本
1992年バルセロナ五輪から2008年北京五輪まで、女子ダブルスでメダルを獲得している国は、中国と韓国の2国だけだった。しかし、2012年ロンドン五輪でようやく日本が銀メダル、ロシアが銅メダルを取る。2016年リオデジャネイロ五輪では、日本が金メダル、デンマークが銀メダル、韓国が銅メダルだった。過去7回で獲得したメダルは中国が12枚、韓国が5枚と圧倒的だ。(バルセロナ五輪では3位決定戦が行われず、準決勝敗退した両ペアに銅メダルが授与された)。そうした中、2018年の世界選手権では、男女ともに各種目で日本選手が躍進した。世界ランキングのベストテンに5組が入っている今、2020年東京五輪でメダルに最も近いのは日本のペアに間違いないだろう。東京五輪で活躍する選手たちの姿が待ち遠しい。