大坂なおみ(WTAランキング3位、8月30日付け、以下同)が、テニス4大メジャーであるグランドスラムの今季最終戦・USオープン(全米OP)に、ディフェンディングチャンピオンとして臨んだが、3回戦で敗れて初の大会連覇はならなかった。
1回戦の勝利後に、大坂は、「私の場合、ラウンドを重ねるごとに自信がついていく感じですかね。この試合(1回戦)を3セットではなく2セットで勝てたことは、正直ホッとしました」と振り返り、また、これまで自他共に認める完璧主義者であった自分が、今は変わりつつあることを話した。
「私は自分が完璧主義者だと人に言ってきました。私にとって完璧でないものは、たとえそれが素晴らしいものであっても、喜べるものではありませんでした。それは健全な考え方ではないと思います。だから、何とかして変えたいのです」
2回戦は相手の棄権によって不戦勝で勝ち上がり、3回戦で、レイラ・フェルナンデス(73位、カナダ)と対戦した。フェルナンデスは、今年3月のWTAモンテレー大会(メキシコ)でツアー初優勝を果たした急成長中の18歳(試合時、9月6日に19歳になった)。大坂に対して失うものはないと果敢にプレーし、ベースライン付近から左利きのグランドストロークを、ひざを深く曲げながら早いタイミングで打ち込んでいった。
大坂はフェルナンデスに手を焼きながらも、勝利まであと1ゲームにこぎつける。だが、第2セット第12ゲームで、ミスの多い大坂がサービスキープに失敗すると、そこから試合の流れはフェルナンデスに傾いた。フェルナンデスは、18歳と思えないような勝負師の目を輝かせ、強気のプレーで大坂に対して一歩も引かなかった。
精神的な強さが問われる競った場面や、自分のプレーがうまくいかなかった場面で、大坂のメンタルが不安定になったのは手に取るようにわかった。ミスにいら立ち、ラケットをコートへ投げた大坂は、ファイナルセット第2ゲームの40-15になった場面で、フェルナンデスのネットインしたボールを観客席に打ち込み、主審から警告を受ける有り様だった。
「それ(ラケットを投げたり、感情的になったこと)は本当に申し訳ない。冷静になれと自分に言い聞かせていたのですが、感情を抑えきれませんでした。普段私は、挑戦することを好きだと感じています。でも、最近は自分の思い通りにならないと、とても不安になる。なぜ、今のような状態になったのかはよくわかりません。子供のような振る舞いでした」
結局、大坂は、15本のサービスエースを含む37本のウィナーを決めるが、36本のミスを犯し、28本のウィナーを打ち込んだフェルナンデスに、7-5、6-7(2)、4-6で逆転負けを喫して大会連覇はならなかった。
「最近の私は、勝っても嬉しくないような気がしています。どちらかというとホッとする感じです。そして、負けるとすごく悲しい気持ちになります。それは、普通じゃないと思うのです」
3回戦の会見で、大坂はこう語りながら涙を流し始めた。“朝に目覚めることができただけで勝者だ”というマインドセットで臨んだUSオープンだったが、またもや涙の大会になってしまった。
「基本的に、私は今、自分が何をしたいのかを考えているところだと思います。正直、次にテニスの試合をするのはいつになるかわかりません。私は、しばらくテニスをお休みしようと思います」
大坂は涙を流しながら休養宣言をしたところで、会見は途中で打ち切られ、何とも言えないやるせなさだけが残った。
8月中旬にツアー復帰をした大坂は、2021シーズンに3大会出場する予定だと話し、USオープンの後は、WTAインディアンウェルズ(10/6~17)大会をスケジュールに入れていたが、現状としてプレーは難しいように思える。
大坂に休養が必要なのは、誰の目にも明らかで、彼女のメンタルヘルスが落ち着き、気持ちの整理ができて、なおかつうつ症状が起こらないようになるまで時間を置くべきだろう。
時間がどのぐらいかかるかわからないが、万全な状態での大坂なおみの帰還を気長に待つことにしたい。