【テニス】ウィンブルドン2021展望:2年ぶりに戻ってきた“聖地”で優勝するのは!?

自身初となるウィンブルドン3連覇を目指す王者ジョコビッチ、女子世界1位バーティは“テニスの聖地”での初戴冠なるか

1 執筆者 神 仁司 Hitoshi Ko
Wimbledon 2019

テニス4大メジャーであるグランドスラムの第3戦・ウィンブルドンが、6月28日から7月11日までイギリス・ロンドンで行われる。昨年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)によって、第2次世界大戦以降初の中止となったが、今年は“テニスの聖地”といわれるウィンブルドンに大会が帰ってくる。

会場には収容人数の上限50パーセントの観客を入れる予定で、さらに男女シングルス決勝では、センターコートに収容人数100パーセントの1万5000人の観客を入れる予定だ。なお、2015年から、ローランギャロス(全仏オープン)とウィンブルドンとの間隔が3週間になっていたが、今年は全仏OPがコロナの影響で1週遅れの開催となったため、昔のように間隔が2週間になってしまった。選手にとっては、レッドクレー(赤土)からグラス(天然芝)へコートサーフェスが変わるという、ただでさえ困難な状況の中、体力やメンタルの回復を少しでも早く行いながら調整をしていかなければならない。

■男子は、ディフェンディングチャンピオン・ジョコビッチが優勝候補筆頭!王者の壁にメドベデフやチチパスら若手が挑む

ラファエル・ナダル(ATPランキング3位、6月21日付け以下同、スペイン、35歳)が欠場を表明した。「自分の体に耳を傾け、チームと相談した結果、これが正しい決断だと判断しました。過酷なクレーシーズンを終えた後の回復は簡単なことではありませんでした。私の決断は中長期的な視野に立ったもので、体の不調を防ぐことは、最高のレベルで戦い続けるための重要な要素です」と語ったナダルは、Tokyo 2020(東京五輪)の欠場も併せて発表し、8月上旬から始まる北米ハードコートシーズンに備えるつもりだ。

2021年にオーストラリアンOPと全仏OPを制しているノバク・ジョコビッチ(1位、セルビア、34歳)は、ATPマヨルカ大会(スペイン)のダブルスに出場してグラスへの調整を行っている。今回のウィンブルドンも、ディフェンディングチャンピオンで6回目の優勝と自身初の3連覇を狙うジョコビッチが、優勝争いの中心になりそうだ。もしジョコビッチがウィンブルドンで優勝すれば、同一年にグランドスラム4大会とオリンピックを全制覇する“ゴールデンスラム”達成への望みをつなぐことにもなる。男子選手では誰も成し遂げていない偉業なだけに、ジョコビッチがゴールデンスラマーに近づけるのかどうかも注目される。

王者ジョコビッチの大きな壁に挑むのが、ダニール・メドベージェフ(2位、ロシア、25歳)、ステファノス・チチパス(4位、ギリシャ、22歳)、アレクサンダー・ズベレフ(6位、ドイツ、24歳)、マッテオ・ベレッティーニ(9位、イタリア、25歳)ら若手勢で、全員ウィンブルドン初優勝とともに、グランドスラム初タイトル獲得を目指す。

特に注目したいのが、ウィンブルドン前哨戦であるATPロンドン大会で初優勝したベレッティーニだ。ロンドン大会初出場で初優勝は、1985年のボリス・ベッカー(ドイツ)以来の快挙だ。

「信じられない1週間だった。ボリスと同じことを達成できるなんて。子供の頃からこの大会を見て、出場したいと思っていた。優勝できて夢が叶った」と語ったベレッティーニは、長身196センチから繰り出されるビッグサーブと得意のフォアハンドストロークが武器で、ウィンブルドンでも優勝戦線に絡んでくる可能性が高い。

そして忘れてはならないのが、ウィンブルドンで男子最多8回優勝を誇るロジャー・フェデラー(8位、スイス、39歳)だ。2020年2月と6月に2度の右ひざの手術を行い、そのリハビリを乗り越え、2021年3月に1年2カ月ぶりとなる戦列復帰を果たした。まだまだ100パーセントのコンディションとは言えないが、テニスの聖地に帰還して、華麗なテニスを見せてくれることを楽しみにしたい。

■群雄割拠の女子テニス界で、バーティのウィンブルドン初優勝はなるか

全仏OP期間中にうつに悩まされていることを打ち明けた大坂なおみ(WTAランキング2位、6月21日付け以下同、23歳)は、残念ながらウィンブルドン欠場となる。

現在の女子テニス界では、誰が優勝戦線に絡んでもおかしくないほどの群雄割拠の時代が続いていて、絶対女王が存在していない。ただ、その中でアシュレイ・バーティ(1位、オーストラリア、25歳)の実力は一目置くべきだろう。トップスピンのフォアハンドストロークや片手バックハンドで打つスライスなどさまざまな球種や、緩急を駆使しながら戦術を巧みに操るオールラウンドプレーヤーで、パワーやスピードに頼る選手が多い中で異彩を放つ。これまでウィンブルドンではベスト16が最高成績だが、グラスは得意としていて、前哨戦ではすでに優勝経験があるため、ウィンブルドンでも十分初優勝を狙える力を持っている。

一方、ディフェンディングチャンピオンのシモナ・ハレプ(3位、ルーマニア、29歳)は、左ふくらはぎのケガのため、全仏OPを欠場しており、どれだけコンディションが戻っているか不安要素が残る。

若手の中では、コリ・ガウフ(23歳、アメリカ、17歳)の成長も見逃せない。2019年ウィンブルドンで、当時弱冠15歳ながらベスト16へ進出をしてセンセーショナルな活躍を見せたのは記憶に新しい。今回も躍動感溢れるテニスで大きな活躍が期待される。

そしてグランドスラムで23回の優勝を誇るセリーナ・ウィリアムズ(8位、アメリカ、39歳)の存在も忘れてはならない。ウィンブルドン7回の優勝を誇るが、2018年と2019年は準優勝に終わっているだけに、パワフルなサーブを武器にタイトル奪還へ執念を燃やしてくるはずだ。

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