【テニス】ウィンブルドン2021展望:錦織圭はどんなプレーを見せるのか!?

2年ぶりに立つ“テニスの聖地”での活躍を期待。一方で右手首に不安も……

1 執筆者 神 仁司 Hitoshi Ko
Kei Nishikori

錦織圭(ATPランキング53位、6月21日付)が、テニス4大メジャーであるグランドスラムの第3戦・ウィンブルドン(6月28日~7月11日、イギリス・ロンドン)に挑む。昨年のウィンブルドンは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)によって、第2次世界大戦以降初の中止となったため、2年ぶりの出場となる。

ここ2年間に錦織はさまざまな経験をした。2019年10月には、2度目となる右ひじの手術。その後、リハビリを経て、2020年9月に戦列復帰を果たした。プライベートでは、2020年12月に結婚した錦織が、これまでと変わらずテニスに邁進していくことを強調した。

「(結婚しても)違わないかな、いまのところは。若干変わりつつありますけど……。でも、やっぱり主体は自分のためだし、自分がどこまでできるかを追い求めるのが、自分のこのテニスの人生だと思っている。テニスの本質上、やっぱりコートでは独りだし。自分のやる気次第で全て変わるので。サポートしてもらっているところで言えば、やっぱり感謝です。いい成績をチームのために残したいというのは、もちろんあります」

さらに錦織は「もし家族が増えたら、変わってくるのかなというのは、ほかの人のインタビューとか意見とか聞いていると感じますけど」と語っていたが、2021年5月には妻の舞さんに第一子が授かったことを発表した。錦織の心境は変わったのだろうか。

「まだ変わりません(笑) 最初の数カ月はあまり変わらないんだなと思っていましたが、やっぱり(妻の出産が)近づいてくると自覚もしだしたり。僕自身があまり痛みとかない分、どうしてもやっぱりお母さんには実感としては負けますけど、ちゃんとしないといけないなという。1日何時間も(自分の好きな)ゲームをする人生が終わるんだなというのはありますね」

自他ともに認めるゲーマーでもある錦織は、将来自分の子供とゲームを「一緒にやれたらいいですけどね」と笑いながら語った。

31歳になった錦織は、公私共に新たなステージに突入しているが、復帰を遂げたテニスでは、なかなか大きな結果を出すことができず、6月14日付けのATPランキングでは、2011年9月以来、約10年ぶりに世界のトップ50から陥落した。

全仏オープン終了後グラスシーズンに入ってから、錦織は、ウィンブルドン前哨戦のATPハレ大会(ドイツ)で、約2年ぶりにグラス(天然芝)で試合をして、「やっぱり久々感はありましたね。ちょっと慣れないところもありましたけど」と語って、2回戦で大会を終えた。錦織にとって、グラスでの試合は、実に2019年ウィンブルドン以来約2年ぶりだった。

ハード、クレー(土)、グラスといったコートサーフェスの中で、錦織が一番苦戦してきたのがグラスだった。錦織は、ツアー屈指のフットワークの良い選手に挙げられるが、そのフットワークの良さをグラスでは発揮しにくく、むしろ難しさを感じてきた。

「どうしても芝での動きが、自分の中でいまだ100点だと思っていないので。(ロジャー・)フェデラーの試合を見て、本当に動きがスムーズで無駄がないというか。(フェデラーは)どのコートでも無駄はないですけど、芝でプレーしていることを感じさせない動きというか。ああいうのを見ていると、自分はまだまだだなと動きの面ではそう思いますね」
「滑ってというか、止まって動き出すところ、振られた時のディフェンスが(難しい)。ロジャーなんかを見ていると、無駄のないステップというか、自分の場合、まだ微調整をしてしまったり、ちょっとうまくボールに入れない時があったりするんですけど、止まってまた動き出すというところで、あまりスピードが活かせない。芝とかクレーは、どうしても切り返しの部分で滑っちゃって加速が難しいので、そこが課題点ですかね」

前哨戦での戦いを終えた後、錦織は右手首に炎症があることも打ち明け、実はハレ大会に出場することも迷っていたという。

「ちょっと手首に不安があるので、この大会も出られるか微妙なところでした。やめる選択もありましたけど意外とできた。というところで、ちょっと一回休まないと。100パーセントに手首を戻してからです。2、3週間長引いていて、ずっと(5月下旬の)フレンチ(全仏OP)前から(痛みが)あり、10日間ぐらい(痛みが)あるのでしっかり治してからですね」

これまでグラスシーズンでの錦織は、2015年には左ふくらはぎ、2016年には左わき腹筋痛、2017年には腰、いずれもケガをして100パーセントの状態でウィンブルドンに臨めなかった苦い経験がある。今回はグラスシーズン中にケガをしたわけでないが、心配なのはその右手首の痛みは、2017年に長期離脱した時と同じ箇所だという。

「場所的には一緒なんですけど、脱臼の時は急に1回でなったので、ああいう可能性もなくはないですけど。ああいう風にはならないと思うんですけど、炎症的なものもこの(ハレ)大会が始まる前にはあった。スポットとしては同じところなので、しっかり治さないといけない場所ではある。気を付けながら、この後(ウィンブルドンまで)休みがあるので、たぶん大丈夫だと思います」

こう語る錦織だが、無理は禁物だ。万が一大きなケガにつながると、右手首だけに錦織の選手生命にも影響を与えかねないので慎重に対処すべきだ。右手首の回復状況を見ながら、ウィンブルドンに備えるつもりの錦織は、

「芝はちょっと一番目標を立てづらいというか、なるべく上には行きたいなと思いますけど、またシードもないので1試合ずつという感じですかね」

2018年と2019年のウィンブルドンでベスト8に進出して、グラスでもいいプレーができることを披露した錦織だが、果たして2年ぶりとなる“テニスの聖地”で、どのようなテニスを見せてくれるのか注目したい。

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