【アスリートの原点】福士加代子:マラソンで5度目のオリンピックをめざす「みちのくの爆走娘」。トレードマークの笑顔の大切さを教えてくれたのは──

めざすは2大会連続となる「マラソン代表」の座

1 執筆者 オリンピックチャンネル編集部
2013年8月にロシアで行われた世界陸上競技選手権大会のマラソンでは銅メダルを獲得。満面の笑みでゴールを喜んだ

2020年1月末の大阪国際女子マラソンではよもやの途中棄権。5度目のオリンピック出場をめざす福士加代子は今、厳しい状況に立たされている。残されたチャンスは3月8日の名古屋ウィメンズマラソンのみとなったが、持ち前の明るさを武器に「もう一度、次に向かってスタートします」と前を向いた。その強靭なメンタリティ、そして競技人生を支えてきた努力に焦点を当てる。

底抜けに明るい笑顔の裏には、恩師の言葉があった

福士加代子は2019年3月の名古屋ウィメンズマラソンで執念の走りを見せ、2時間22分17秒の自己ベストに次ぐタイムをたたき出し、見事にマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)出場を決めた。あどけない笑顔を見ているとその年齢をつい忘れてしまいそうになるが、彼女は3月25日に38歳の誕生日を迎える。最年長のMGC出場選手でありながら、その情熱は誰よりも熱く燃えている。

福士が青森県北津軽郡板柳町で産声をあげたのは1982年3月25日。幼いころから抜群の運動神経を誇る彼女が夢中になっていたのは、陸上ではなくソフトボールだった。中学では1年時こそ補欠だったが、2年からはレギュラーに定着。捕手として活躍した。足の速さに目を付けた陸上部の顧問から熱心な勧誘を受けていたが、「団体競技がいい」と断っていたという。

しかし、進学した五所川原工業高等学校にソフトボール部はなかった。そこで福士は誘われるまま陸上部に入り、トラック競技との出会いを果たす。

当初は決して目立つ選手ではなかった。どちらかというと友人との時間を楽しむために練習に参加していたが、2年次、顧問からの運命の一言が彼女を変えることになる。「苦しい時ほど笑顔をつくりなさい」。以来、本気で陸上に打ち込み始めた福士は、青森最強の選手へと成長。このアドバイスがトレードマークの「笑顔」の原点となった。

リオでようやくつかんだ「マラソン女子代表」の座

高校卒業後、駅伝の古豪として知られていたワコールに入社すると、トラック競技や駅伝で存在感を示していく。初のオリンピック出場となった2004年アテネ五輪の10000メートルでは26位という悔しい結果に終わり、2008年にはマラソンへの転向を決意する。

しかし、その挑戦は決して簡単な道のりではなかった。初マラソンとなった2008年の大阪国際女子マラソンでは長距離に体が順応せず、意識を失いかける場面もあった。結局同年の北京五輪ではマラソンでの出場を断念したが、アテネ、北京、ロンドン大会と3大会連続でトラック競技の代表としてオリンピックの舞台に立っている。

30歳を過ぎた福士はマラソンでのオリンピック出場という夢を諦めてはいなかった。引退するどころか2016年1月の大阪国際女子マラソンで3年ぶり2度目の優勝を果たし、リオデジャネイロ五輪代表の座を勝ち取った。日本の女子陸上選手として史上最多となる4大会目のオリンピックに挑み、リオのマラソンでは日本人最高位となる14位の記録を残した。

2017年には私生活での変化もあった。6歳年上のマラソン関係者と結婚し、強力なパートナーとともに「2020年の東京五輪出場をめざす」と宣言。あるインタビューで「この道を選んじゃったからもうこれしかない」と話したことがある。底抜けの明るさとど根性で、最後の一枠を狙う。真骨頂は「苦しい時ほど笑顔」の人生だ。

選手プロフィール

福士加代子(ふくし・かよこ)

マラソン選手

生年月日:1982年3月25日

出身地:青森県北津軽郡板柳町

血液型:A型

身長/体重:160センチ/46キロ

出身校:板柳中(青森)→五所川原工高(青森)

所属:ワコール

オリンピックの経験:アテネ五輪、北京五輪、ロンドン五輪(いずれも10000メートル走)、リオデジャネイロ五輪(マラソン)

ブログ:ワコール女子陸上部 スパークエンジェルス

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