陸上競技の屋外シーズン、いよいよ開幕!東京五輪出場までの道筋を徹底解説

現時点の参加標準記録突破者は?屋外ならでは事情や、にわかに脚光集める男子走幅跳ほか、注目種目・選手を紹介
文: 児玉育美

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により1年程度の延期を余儀なくされたTokyo 2020(東京五輪)開催に向けて、日本陸上競技界もトラック&フィールド種目の屋外シーズンをスタートさせた。

陸上競技はここまでロードで実施されるマラソン(男女6名)・競歩(男女8名)のほか、トラック種目でも、昨年12月に行われた日本選手権長距離において、すでに代表内定者(男女10000m:各1名、女子5000m:1名の計3名)が出ている。

◆これからが本番!トラック&フィールド種目

陸上競技場で実施される個人種目の大半は日本選手権(6月24~27日、10000mは5月3日、混成競技は6月12~13日に別開催)の結果を踏まえ、6月28日に第1次代表内定選手を発表するスケジュールが組まれている。

日本代表選手の選考自体は、日本陸連(JAAF/日本陸上競技連盟)が定めた選考要項に沿って行われる。ここでは日本選手権の順位が重視されるものの、世界陸連(World Athletics:WA)の設定する参加資格を該当競技者がクリアしていることが大前提となる。

世界陸連は今回のTokyo 2020(東京五輪)から参加資格獲得システムを変更。従来の参加標準記録に加えて、2019年から始めた「WAワールドランキング」を併用する方式を採った。

各種目の出場枠(ターゲットナンバー)を上限として、まず参加標準記録突破者(約半数を想定)に出場資格を与え、残り半数はWAワールドランキング上位者が出場資格を得られる仕組みだ。

日本人選手がオリンピック出場権を手に入れる上で、最も手っ取り早いルートは「日本選手権で参加標準記録を突破して優勝」することである。しかし、屋外で行われる陸上競技ならではの事情として、気象条件によって目指した記録を出すことが阻まれるケースは多々生じる。

このため競技者たちは、まずは参加標準記録の突破(日本選手権直後の段階で内定を得るためには、これが必須となる)、あるいはWAワールドランキングの順位をできるだけ上げておくことを狙って春先の競技会に出場し、日本選手権に向かっていく。

オリンピック参加標準記録は、参加資格システムがWAワールドランキングとの併用に変更された影響により、以前よりも水準が上がっている。ざっくり例えるなら、この記録をTokyo 2020(東京五輪)本番でマークできれば、8位入賞も視野に入るレベルとなる(ただし長距離種目は若干様相が異なる)。

参加標準記録突破者の多い種目はレベルが高く、Tokyo 2020(東京五輪)本番でも活躍が期待できる種目となる。つまり参加標準記録の突破状況を把握していると、日本選手権に向け、ますます戦いが激化していくトラック&フィールド種目を見ていく上で、その種目の活況ぶりや注目選手の動向がより楽しめるようになるのだ。

◆現時点での参加標準記録突破者

4月15日時点で、トラック&フィールド種目の参加標準記録突破者はのべ18人。種目は男子が100m、200m、10000m、110mハードル、400mハードル、走幅跳の6種目、女子は5000m、10000m、やり投の3種目となっている。

このうち男子10000mの相澤晃(旭化成)、女子10000mの新谷仁美(積水化学)、女子5000mの田中希実(豊田自動織機TC)は、昨年12月に行われた日本選手権の結果により、代表に内定済み。また女子10000mで参加標準記録を突破している一山麻緒(ワコール)は、マラソンでの代表に内定している。

このほか長距離では、男子10000mで伊藤達彦(Honda)、女子5000mでは廣中璃梨佳(日本郵政グループ)と10000mで内定済みの新谷が突破。今後行われる日本選手権は、残り2枚となった代表切符をめぐって競われることになる。

そのほかの状況を種目ごとに見ていくことにしよう。男子100mの参加標準記録は10秒05だが、これを上回っているのが、2019年に9秒97の日本記録を樹立したサニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大、現タンブルウィードTC)、同じく2019年に9秒98をマークした小池祐貴(住友電工)、そして有効期間内に10秒01で走っている桐生祥秀(日本生命)の3選手。

ご存じの通り桐生も9秒台スプリンター(2017年に日本人で初めて10秒の壁を突破する9秒98をマーク)で、突破者3人が9秒台の自己記録を持つという水準は、世界的に見てもハイレベルだ。

男子200m(参加標準記録20秒24)でも、サニブラウン(20秒08)と小池(20秒24)が、ともに2019年に突破済み。ちなみに、サニブラウンは、U18年代から「ネクスト・ボルト」の筆頭として世界的に注目を集めてきた選手で、2017年ロンドン世界選手権200mでは史上最年少での決勝進出を果たし、7位入賞の実績を残している。

男子400mハードル(48秒90)では、2019年に安部孝駿(ヤマダホールディングス)が48秒80をマークして突破。男子110mハードル(13秒32)で突破を果たしている高山峻野(ゼンリン)が2019年にマークした13秒25は日本記録で、高山はこの年、日本記録を4回塗り替え、参加標準記録も2度上回っている。

大きな盛り上がりをみせているのが男子走幅跳だ。2019年に行われたアスリートナイトゲームズイン福井で、城山正太郎(ゼンリン、8m40)、橋岡優輝(富士通、当時日大、8m32)、津波響樹(大塚製薬、当時東洋大、8m23)の3選手が、8m22の参加標準記録をそろって突破している。橋岡と城山は従来の日本記録(8m25、1992年)も更新しての結果だった。

その後、秋には3人そろって2019年ドーハ世界選手権に出場し、橋岡と城山は決勝に進出。橋岡は世界選手権の走幅跳で日本人初の入賞(8位)を果たした。橋岡は昨年秋も8m29をマーク、今年3月の日本選手権室内では8m19の室内日本新記録も樹立している。

女子ではやり投で北口榛花(JAL、当時日大)が、2019年5月に64m36、10月に66m00と日本記録を2回更新するとともに、参加標準記録64m00を突破した。北口は2015年世界ユース選手権金メダリストで、前述のサニブラウンとともに、当時から世界レベルでの活躍を期待されてきた若手アスリートだ。

このほか、コロナ禍の影響で世界陸連が、Tokyo 2020(東京五輪)参加資格有効期間を中断した昨年の4月6日から11月30日の間に標準記録を上回った男子100mのケンブリッジ飛鳥(Nike、10秒03)、男子110mハードルの金井大旺(ミズノ、13秒27)、女子5000mの萩谷楓(エディオン、15分05秒78)の3選手。

さらには、男子100mの山縣亮太(セイコー、10秒00)、男子200mの飯塚翔太(ミズノ、20秒11)、男子走高跳(2m33)の戸邉直人(JAL、自己記録2m35=日本記録)、男子やり投(85m00)の新井涼平(スズキアスリートクラブ、86m83)など、標準記録を上回る自己記録を持つ競技者も複数存在する。

著しい進境ぶりで参加標準記録に肉薄しつつある競技者も多数いるだけに、日本グランプリシリーズをはじめとする、この春に実施が予定されている競技会で、突破者が新たにどれだけ増えていくか注目したい。

◆今後の日本グランプリシリーズ 大会日程

4月25日(日)【神戸大会】第69回兵庫リレーカーニバル

4月29日(木・祝)【広島大会】第55回織田幹雄記念国際陸上競技大会

5月3日(月・祝)【静岡大会】第36回静岡国際陸上競技大会

5月4日(火・祝)【延岡大会】第32回ゴールデンゲームズinのべおか

5月5日(水・祝)【水戸大会】2021水戸招待陸上

5月5日(水・祝)【大阪大会】第8回木南道孝記念陸上競技大会

6月6日(日)【鳥取大会】布勢スプリント2021

6月6日(日)【新潟大会】Denka Athletics Challenge Cup 2021

10月17日(日)【山口大会】第18回田島直人記念陸上競技大会