野中生萌:「やめたいと思ったことは一度もない」。強さと明るさを兼ね備えるクライミング界の新女王の半生【アスリートの原点】

おしゃれなメイクやファッションも若者世代の注目の的

2018年にワールドカップ(W杯)で年間総合優勝を成し遂げ、クライミング界の新女王に名乗り出た野中生萌(みほう)。一時は選考基準の混乱があったものの、2019年の世界選手権で日本人2位となった実績が評価され、東京五輪代表に内定した。ファッションにも気を配る強く美しいアスリートの原点とは。

9歳の時にキャリアをスタートさせ、16歳で日本代表入り。以降は女子クライミング界の第一線で活躍し続けている

9歳の時、父とともにクライミングジムへ

野中生萌(みほう)は1997年5月21日、東京都豊島区で3姉妹の末っ子として生まれた。「生萌」という名前は、若葉が青く萌える5月に生まれたことから授けられたという。

幼いころから活発で、クラシックバレエや体操を習うなど、体を動かすことが大好きだった。クライミングとの出合いは9歳の時。登山が趣味の父が体力づくりのため、クライミングジムに通っていたことがきっかけだった。最初のころはジャングルジムで遊んでいる感覚だったが、二人の姉に負けたくないという気持ちに火が点き、ひたすら練習したという。

負けず嫌いでストイックという、生まれつきのアスリート。練習が決して苦ではなく、とにかく楽しかったと言い切れるところが彼女の強さの秘訣だろう。本人の記憶によると、小学4年生か5年生の時には初めて出た大会で優勝したという。「落ちるのが怖くてがむしゃらだっただけ」と振り返っているが、試合前の緊張感、そして勝利による高揚感に魅了され、ますます競技にのめり込んでいった。

中学入学後は吹奏楽部に在籍しながら、クライミングのトレーニングを続けた。2008年にはジュニアオリンピックのリード種目で2位に入り国際舞台での経験値も手にしたが、成長期を迎えた時には筋肉のつき方が変わり、これまでのような動きができない自分に戸惑ったこともあった。思うように登れず、焦る日々。しかしクライミングをやめようと思ったことは一度もなかったという。いつかきっとこの壁を乗り越えられる──本人いわく「根拠のない自信で」自分自身を信じていた。

競技の時もメイクを施すのが野中流(中央)。2019年10月、ワールドビーチゲームズのボルダリングで金メダルを獲得した

16歳で日本代表に初選出され、W杯の常連に

メンタル面での安定に加え、身体の使い方も成長にうまく適応させていけたことで2013年、16歳になる年にはリード種目のワールドカップ(以下W杯)日本代表に初選出された。翌2014年からはボルダリング種目に本格的に転向し、ボルダリングW杯に参戦すると6戦目のフランス大会で準優勝。初めて表彰台に立つ喜びを味わった。

さらにアジア選手権でも2014年から2年連続で頂点に立つと、2016年のボルダリングW杯のムンバイ大会で悲願の初優勝を勝ち取る。同年のW杯ミュンヘン大会でも優勝を成し遂げ、世界ランキング2位に立った。2016年には世界選手権でも銀メダルを獲得し、一気にブレイクを果たした。2018年には年間優勝も成し遂げた。

2019年にはワイヤレスイヤホンのCMに起用されたこともあり、お茶の間での知名度も急上昇。引き締まった美しい筋肉はもちろん、試合中でもメイクやヘアカラー、ネイルを整え、ファッションを楽しむ彼女の姿は見る者の目には新鮮に映った。おしゃれを楽しまない旧来のアスリートイメージを変えていきたいと話し、ツイッターやインスタグラムにはセンスの良さやこだわりを感じさせる写真が数多く投稿されている。

メディアに対し「憧れの選手は特にいない、自分のスタイルを貫きたい」と話したことがある。コロナ禍で思うようにトレーニングができないなかでも、この経験が後の人生にいつか必ず生きてくると感じているという。常に自然体、そして誰よりもクライミングを全身全霊で楽しむ野中生萌は、2021年夏の東京で表彰台から最高の笑顔を見せようとしている。

選手プロフィール

  • 野中生萌(のなか・みほう)
  • スポーツクライミング選手
  • 生年月日:1997年5月21日
  • 出身地:東京都豊島区
  • 身長/体重:162センチ/53キロ
  • 出身校:林町小(東京)→駒込中(東京)→日出高(東京)
  • 所属:XFLAG
  • オリンピックの経験:なし
  • ツイッター(Twitter):生萌(@rrrff2RATFINK)
  • インスタグラム(Instagram):NONAKA MIHO / 野中 生萌(@nonaka_miho)

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