【車いすテニス】国枝慎吾が男子単で涙の金メダル…上地結衣は女子単で初の銀メダル獲得!

日本代表選手たちの活躍が光った東京2020パラリンピック
文: 神 仁司 Hitoshi Ko
車いすテニス

東京2020パラリンピックの車いすテニス競技で、日本代表選手たちが、母国日本で活躍して大きな足跡を残した。

■上地結衣が、初の銀メダルを獲得するが悔しさも

女子シングルスでは、パラリンピック(以下パラ)3大会連続出場の上地結衣(ITF車いすテニス女子ランキング2位、8月30日付け、以下同)は、第2シードとして戦い、準決勝で、第3シードのアニク・ファンクート(3位、オランダ)を6-2、6-2で破り、パラで初の決勝進出を決めた。日本女子選手として初の決勝進出となったが、これまで上地は、2012年ロンドンパラの準々決勝、2016年リオデジャネイロパラ準決勝、いずれもファンクートに敗れていたが、ついにリベンジを果たした。

決勝は、第1シードのディーデ・デフロート(1位、オランダ)との頂上決戦になった。

上地はミスを15本に抑えつつ21本のウィナーを決めたが、デフロートは42本のウィナーを放った。特に、デフロートのバックハンドが好調で、リターンから攻勢に出て上地にプレッシャーを与えた。1時間45分におよんだ戦いの末、デフロートが6-3、7-6(1)で上地を破り金メダルを獲得した。

母国日本の東京でのパラで、上地は、車いすテニスの日本女子選手として初の銀メダルを獲得したが、彼女の目からは滂沱(ぼうだ)の涙が流れ落ちた。

「自分の目標としていたのが、今大会(東京パラ)は内容も充実させ自分がやりきったと思える試合をして、そして金メダルを取ることだった。なかなか思うような結果にはならなかったけれども、今日、いま自分ができることはやりきったかなと思うので……。そうですね、ただやっぱり銀メダルは悔しいですね」

1992年以来、パラにおける車いすテニスの歴史の中で、女子シングルスの金と銀は、オランダ勢で占められてきたが、ついに上地がその牙城を崩し新たな歴史をつくった。なお、パラ初出場で第5シードの大谷桃子(5位)は、準々決勝でデフロートに敗れてベスト8だった。また、女子ダブルスでは、3位決定戦で、第3シードの上地/大谷が、ワン/ジュ(中国)を6-2、7-6(3)で破り初めて銅メダルを獲得した。

「この2人で東京パラリンピックを目指すと決まってから、すごく短い時間でしたし、ダブルスという面では、ここ数年間常にペアを組んでいるわけではなかった。難しい場面も多々あったと思うんですけれども、最後まで本当にすごく走ってくれて粘ってくれた。これまでの大会は、チャンスがあってもそれを形にできなかったところがあった。今回初めて結果として、形として残るものができたというのはすごくうれしいですし、これまで一緒に戦ってきた先輩方にも(銅メダルを)お見せしたいなと思います」(上地)

「上地選手とダブルスを組むからには、メダルを獲得して帰らなくちゃいけないというのは絶対だと思っていたのでホッとしています」(大谷)

■国枝慎吾が、日本テニスの聖地で金メダルを獲得して男泣き

男子シングルスでは、東京でパラ5大会連続出場となる国枝慎吾(ITF車いすテニス男子ランキング1位、8月30日付け、以下同)が、日本テニスの聖地といわれる有明コロシアムのコートで、金メダルを獲得して男泣きした。

東京で第1シードとしてプレーした国枝は、大会後半になってテニスのレベルを引き上げていった。準々決勝では、長年にわたって宿敵である第6シードのステファン・ウデ(6位、フランス)を、7-6(7)、6-3で破った。準決勝では、第5シードのゴードン・リード(5位、イギリス)を6-3、6-2で破り、「自分自身のマックスが今日出たと思います」と語って、パラで2大会ぶり3回目の決勝へ自信を深めた。

決勝で国枝は第8シードのトム・エフベリンク(8位、オランダ)に対して、ネットプレーを積極的に交ぜて攻撃テニスを貫いた。時にはサーブ&ボレーにもトライした。国枝は試合の主導権を握り続け、6-1、6-2、王者のテニスで圧倒した。2大会ぶり3回目の金メダルを決めた瞬間、国枝は顔をおおい、あふれ出る涙をこらえきれず男泣きした。

「まだ夢の中にいるような気持ちですけど、本当にこの日のためにすべてを費やしてきたので、それが報われて良かったです」

パラの期間中、国枝は、2006年から指導をあおいでいるメンタルトレーナーのアン・クインさん(オーストラリア)と毎日連絡を取り合っていたという。クインさんは、国枝に「俺は最強だ!」と毎日口に出してメンタルトレーニングをすることを勧めた人だ。

「今日も何度もロッカーで、鏡に向かって言い聞かせたことが、本当に、最後実現して良かったです。彼女が、必ずセルフトークを毎日やるようにと、そして、最後にはガッツポーズしている自分をイメージトレーニングして臨みなさいと」

国枝は、リオデジャネイロパラの前、2016年4月に2回目となる右ひじの手術を行った。当時、若手の台頭もあって、なかなか思うような結果が残せない時期もあったが、その難局を乗り越えて世界1位に返り咲き、ついに東京でパラの頂点に再び上り詰めた。

「本当にリオの後は、引退も何度も考えましたし、また世界1位に復帰して、こうして東京パラリンピックで金メダルを取れるなんてというのは信じられないですね。支えてくれた妻、コーチとトレーナー、この舞台に立たせてくれて本当に感謝でいっぱいですね」

なお男子ダブルスでは、3位決定戦で第3シードの国枝/眞田卓(9位)が第4シードのエフベリンク/マイケル・スヘファース(オランダ)に3-6、2-6で敗れ、銅メダルにはあと1歩届かず4位入賞となった。

■クアードダブルスで、菅野/諸石が、初の銅メダル獲得!

クアード(男女混合・上下肢障害)のシングルスでは、3位決定戦で、パラ初出場の菅野浩二(ITF車いすテニスクアードランキング6位、8月30日付け、以下同)が、ニールス・フィンク(5位、オランダ)に1-6、4-6で敗れて銅メダルを逃し、4位入賞となった。

またクアードダブルスでは、3位決定戦で、菅野浩二/諸石光照(11位)が、アントニー・コトリル/アンディ・ラブソーン(イギリス)を、7-5、3-6、7-5、3時間4分におよぶ激戦の末破り見事銅メダルを獲得した。この種目では、日本勢初のメダル獲得となった。

「ロンドンパラリンピックから今年で9年、長かったなと思います。菅野くんとの共同作業で勝ったなという感じです。本当にうれしい。メダルを目指して合宿も頑張ってきましたので、その思いだと思います。最後は、2人の気力、思いです」(諸石)

「本当にうれしいです。今回、僕と諸石さんで銅メダルは取れたのですが、諸石さんと、ロンドン、リオデジャネイロで一緒に戦ってきた川野(将太)くんら今回来られなかった選手の分までやってやろうと思っていたので、結果が出せて本当に良かったです。本当にいろんな人に助けてもらって、いろんな人に練習を見てもらって、メダルを取れて本当にうれしいです」(菅野)