第97回日本選手権水泳競泳大会「ジャパンスイム2021」総括:萩野公介、池江璃花子らが東京五輪へ

前回リオデジャネイロでは北島康介が落選「世界一厳しい」五輪代表選考会
文: マンティー・チダ

今夏に行われるTokyo2020(東京五輪)日本代表の選考を兼ねた「第97回日本選手権水泳競技大会」が、4月3日から10日まで、五輪本番の会場でもある東京アクアティクスセンターで開催された。「世界一厳しい代表選考」とも言われている、日本代表の選考会を改めて振り返ってみよう。(写真:時事)

◆世界一厳しい代表選考とは?

日本選手権と兼ねる形式で行われたTokyo2020(東京五輪)日本代表選考会。かつては国際大会派遣選手代表選考会として、日本選手権とは別に開催されていたが、1992年のバルセロナ五輪から4月に日本選手権と同時開催になった。

同時開催を始めた頃は、各種目2位以内の選手から「世界で戦える選手」という名目で選出されていたが、2004年からは選手権の決勝で日本水連が定めた派遣標準記録を突破した上での2位以内という「一発勝負」に変更された。

五輪に出場できる選手の資格としては、国際水泳連盟が設定した参加標準記録があり、これを突破した選手で各国2人まで出場権が与えられる。日本水連が設定している派遣標準記録はこのタイムよりもレベルが高く、対象レースもこの日本選手権のみで、基準を満たす選手がいなければ、当該種目の代表選出は見送りとなる。

2016年リオデジャネイロ五輪代表の選考においては、アテネと北京で2大会連続2冠に輝いた北島康介が、男子100m平泳ぎ決勝で2位に入りながら代表入りを逃しているのは記憶に新しい。準決勝で派遣標準記録を切りながら、決勝ではそのタイムに届かなかった。過去の実績から特例の声があったものの、記録を求められるレースで結果を出すことができるのか、まさに五輪本番を想定した代表選考である。

◆瀬戸大也が3種目で代表内定、萩野公介は200m個人メドレーで内定滑り込み

2019年世界選手権で男子200m個人メドレーと400m個人メドレーを制し、Tokyo2020(東京五輪)代表内定第1号となった瀬戸大也。世界選手権金メダルを引っ提げて五輪本番を迎えるものと思われたが、コロナ禍による大会延期と、周辺を騒がせる事態で練習に集中することが難しくなった。

日本選手権でも調整不足を心配されたが、唯一代表内定を獲得できていなかった男子200mバタフライで、派遣標準記録を突破して2位に入り、3種目の内定を勝ち取った。すでに代表内定を獲得している男子200m個人メドレーでは、萩野公介を振り切って優勝したが、世界選手権を制したタイムから1秒以上遅れているということもあり、さらなる強化が必要のようだ。

「タイムはまだまだ。夏までにしっかり、もっともっとレベルアップさせて、(五輪の本番)初日から安心して見てもらえるように強化したい」と瀬戸自身も調整不足を認めている。どこまでコンディションを向上できるのかに期待したい。

瀬戸のライバルであり、前回のリオデジャネイロ五輪では男子400m個人メドレーで金メダルを獲得した萩野は、2019年3月に成績不振から長期休養を選択。8月にレースへ復帰するが、結果を残すまでには至らない時期が続いた。Tokyo2020(東京五輪)へ向けて、今大会は200m個人メドレーに絞って代表選考に臨み、派遣標準記録を突破。瀬戸に次いで2位となり、3大会連続の五輪出場を決めた。

男子背泳ぎの入江陵介は4大会連続、女子平泳ぎの渡部香生子は3大会連続で五輪代表内定。そして、2019年2月に白血病を公表し、パリ五輪を目指して調整を続けてきた池江璃花子が女子100mバタフライ、女子100m自由形を制するなど4冠を達成。リレーの2種目で五輪代表内定を勝ち取った。

◆「カツオ」こと松元克央、85年ぶりとなる自由形での金を狙う

五輪初出場組では、2019年の世界選手権で五輪・世界選手権を通じて日本競泳史上初の200m自由形で表彰台に登った(銀メダル)松元克央に注目したい。松元は五輪代表選考会で日本新記録の1分44秒65を叩き出し、初の五輪代表内定を決めた。

2019年世界選手権の優勝タイムを上回ったことから、五輪本番でも金メダル候補として期待される。男子自由形の金メダル獲得となれば、1936年のベルリン大会で寺田登が1500mで獲得して以来、85年ぶりの快挙となる。

「44秒台を出せてうれしい」と代表選考レースで44秒台を出すことに目標を定めていた松元は、五輪延期が決まった1年前を思い出していた。当時も44秒台を出す自信があっただけにショックを隠し切れなかった。あのときの自分に勝つため、松元はモチベーションを保ちながら練習に励んでいた。

日本新記録を出したレース後の記者会見で、小学校時代からの愛称「カツオ」にちなんだ「今日は何ガツオ?」の質問に「新ガツオ」と答えて見せた松元。85年ぶりの快挙を達成した瞬間、松本はいったい「何ガツオ」と叫んでくれるのだろうか。

他にも、男子200m平泳ぎで世界記録に迫る2分6秒40の日本新記録を達成した佐藤翔馬、男子200mバタフライでは瀬戸を抑えて優勝した本多灯にも期待が集まる。

Tokyo2020(東京五輪)水泳・競泳の日本代表内定者

【男子】

◆自由形

  • 100m:中村克
  • 200m:松元克央

◆バタフライ

  • 100m:水沼尚輝、川本武史
  • 200m:本多灯、瀬戸大也

◆背泳ぎ

  • 100m:入江陵介
  • 200m:入江陵介、砂間敬太

◆平泳ぎ

  • 200m:佐藤翔馬、武良竜也

◆個人メドレー

  • 200m:瀬戸大也、萩野公介
  • 400m:瀬戸大也、井狩裕貴

◆リレー要員(4x100mフリー、4x200mフリー、4x100mメドレー)

  • 自由形:関海哉、難波暉、塩浦慎理、柳本幸之介、髙橋航太郎

【女子】

◆自由形

  • 400m:小堀倭加、難波実夢
  • 800m:難波実夢、小堀倭加

◆バタフライ

  • 200m:長谷川涼香

◆平泳ぎ

  • 100m:渡部香生子、青木玲緒樹
  • 200m:渡部香生子

◆個人メドレー

  • 200m:寺村美穂、大橋悠依
  • 400m:大橋悠依、谷川亜華葉

◆リレー要員(4x100mフリー、4x200mフリー、4x100mメドレー)

  • 自由形・バタフライ:池江璃花子
  • 自由形:酒井夏海、五十嵐千尋、大本里佳、白井璃緒、増田葵、池本凪沙
  • 背泳ぎ:小西杏奈