第97回日本選手権水泳競技大会:池江璃花子が白血病から復活、東京五輪リレーメンバーで代表内定を獲得

文: マンティー・チダ

「第97回日本選手権水泳競技大会」が4月10日に閉幕し、池江璃花子が女子100mバタフライ、女子100m自由形を制するなど4冠を達成した。

これによりリレーメンバーの五輪派遣標準記録を突破し、Tokyo2020(東京五輪)の女子400mリレー、女子400mメドレーリレーの代表内定を勝ち取るが、ここに至るまでの壮絶な道のりは想像を絶するものだった。すべてはあの衝撃的な病気の告知から始まった。

◆衝撃の告白「急性リンパ性白血病」からわずか406日でプールへ

2019年2月12日、池江が自身のサイトで急性リンパ性白血病を公表し、世間に衝撃が走った。その前年にあたる2018年は、リレーも含めて8種目で自己ベストを更新。ジャカルタで行われた「第18回アジア競技大会」ではアジア女子史上、日本選手としても初の6冠を達成し、大会MVPに輝くなど順調な選手生活を送っていた。

2019年は池江にとって東京オリンピック1年前(当時)でもあり、世界との距離を縮めるという大事な1年でもあった。そのような時期の「急性リンパ性白血病の告白」である。

池江が患った「急性リンパ性白血病」は血液がんの一種。白血球が減少することにより、細菌やウイルスなどへの抵抗力が失われることから発熱や肺炎などの感染症状が起こり、赤血球の減少から貧血になり、ふらつきやだるさ、息切れが起こるといった症状が現れる。

実際、池江の所属先は「合併症が起きたために骨髄移植といった造血幹細胞移植を受けた」と発表している。

病気の告白から半年後には退院し、翌年の2020年3月17日には406日ぶりにプールへ入ることが許された。それから5か月後、池江は大会出場に漕ぎつける。これだけでも驚異的な回復を果たしたと言っても良いだろう。

◆1年7か月ぶりのレースで設定タイムから0.5秒速くゴールし、驚異的な回復力を示す

2020年8月、池江は「東京都特別水泳大会」の女子50m自由形に出場した。約1年7か月ぶりの復帰レースである。池江は女子50m自由形の日本記録(24秒21)保持者でもあるが、この日は26秒32で泳いで5組1着に。

これは池江自身が目標設定していたタイムよりも0.5秒速い結果でもあり、大病を乗り越えてからの復帰レースで驚異的な回復力を感じさせた。「1番ですごくうれしかった。本当に楽しんで泳げた」と池江は涙を見せながらも笑顔で話すほど、結果に対して満足していた。

復帰レースから約1か月後の10月、池江は「第96回日本学生選手権水泳競技大会」の女子50m自由形に出場すると、予選から25秒87、決勝ではさらにタイムを伸ばして25秒62の4位でフィニッシュ。

2020年11月には「第3回 服部真二賞」の授賞式で、池江は壇上で「2021年に東京オリンピックを控えておりますが、その先の2024年パリを第1の目標」とスピーチしていた。

そして年が明け、2021年1月には「KOSUKE KITAJIMA CUP 2021」で、復帰後初めて女子100m自由形にエントリー。予選で56秒16、決勝では55秒35(4位)を記録し、100mに距離を伸ばしても問題なく泳ぎきった。2月の「ジャパンオープン」では女子50m自由形に出場。さらに記録を更新し、決勝では24秒91と25秒台を切る。

2月22日の「東京都OPEN水泳競技大会2021」では、復帰後はじめてバタフライに出場。100mは全体2位で決勝進出を決めると、決勝では59秒44を記録し3位。50mでは全体1位で予選通過を果たすと、決勝では学生新記録となる25秒77を記録して、復帰後初めての優勝を飾った。

◆無欲の代表内定を勝ち取り、4冠を達成。「自分の日本記録を狙っていける」

復帰レースから順調に駒を進めてきた池江は、4月を迎えると「第97回日本選手権水泳競技大会」へ臨む。会場は東京オリンピックの会場である東京アクアティクスセンター。

最初に挑んだのが女子100mバタフライ。リオデジャネイロオリンピックでは5位入賞を果たしている種目だ。池江は決勝のレース、スタートでやや出遅れたが、50mのターンで先行していた選手に0.03秒差へ迫ると、最後の25mで池江が抜け出してトップでゴールする。

タイムは57秒77で3年ぶりの優勝を成し遂げるとともに、東京オリンピックメドレーリレーの派遣標準記録を突破した。タイムを確認した池江は、スタート台につかまったまま涙を流し、しばらくプールから上がることができなかった。

本当にこの種目は優勝を狙っていなかったので、何番でもここにいることに幸せを感じようと思った。57秒が出るとは思っていなかった。辛くてもしんどくても、努力は必ず報われると感じた。

涙ながらに語る池江にとって、まさに無欲のタイトル獲得だった。

こうして東京オリンピック代表内定選手となった池江は、女子50mバタフライ、女子50m自由形、女子100m自由形も制して4冠を達成。女子400mメドレーリレーに続いて、女子400mリレーでも代表内定を勝ち取った。

いずれですけど、自分の日本記録を狙っていけると思います。

白血病を克服し、再びプールに戻ってきた池江。東京オリンピックでは、笑顔で泳ぎ切ったその先に記録や結果がついてくるはずだ。