第75回全日本体操個人総合選手権、男子は橋本大輝が大逆転V、女子は村上茉愛が連覇

文: マンティー・チダ

Tokyo 2020(東京五輪)日本代表選考会を兼ねた体操の第75回全日本個人総合選手権が、4月15日から18日まで高崎アリーナで行われ、男子は予選7位から巻き返した橋本大輝が初めて制し、女子は村上茉愛が昨年12月の全日本個人総合選手権に続き、2年連続5度目の優勝を成し遂げた。

◆東京五輪の日本代表選考に全日本個人総合選手権の成績が直結

あらためて東京五輪の体操日本代表はどのように選考されるのか。団体枠代表を選出する上で重要となる大会は、5月に行われる第60回NHK杯体操だ。NHK杯で男子は2位以内、女子は3位以内に入れば、東京五輪の日本代表に内定する。(※男子は団体枠代表4名で、残り2名はチーム貢献選手として選考、女子はチーム枠4名で、残り1名はチーム貢献度による選出)

これだけを見れば、NHK杯の大会だけで代表内定選手を決定するように思われるかもしれないが、全日本個人総合選手権の得点が持ち点となり、NHK杯の得点に加算されるため、全日本個人総合の成績がNHK杯に直結すると言っても過言ではない。東京五輪の日本代表内定には、全日本個人総合選手権の成績が大きく関係しているのだ。

◆男子は橋本大輝が決勝で世界レベルの記録を叩き出し五輪へ前進

男子は予選7位だった橋本大輝が4種目(床、跳馬、平行棒、鉄棒)で15点台を記録し、東京五輪の日本代表内定に向けて大きく前進した。15点台は世界レベルの記録とされるが、それを4種目で達成。決勝で叩き出した88.532点は、2019年世界選手権金メダルニキータ・ナゴルニー(ロシア)に迫る記録で、文字通り体操ニッポンの新エースへ潜在能力が開花した瞬間だった。

予選では84.833で7位と出遅れていた橋本。決勝へ迎える前に、指導を受けるアテネ五輪団体金メダリストの冨田洋之コーチから「6種目ミスなくやることがエースになるために一皮むけること」、ロンドン、リオデジャネイロと2大会連続個人総合金メダルの内村航平からも「切り替えてやっていければ大丈夫」とアドバイスを受けていた。予選から巻き返してのタイトル奪取は、東京五輪に向けても大きな経験値となるはずだ。

2位には跳馬で橋本を2日間上回った谷川航、3位には萱和磨が入った。谷川と萱の得点差はわずか0.032で、橋本から萱までの得点差も0.669。この得点差がNHK杯にも影響するが、高難度の技が成功すること、ちょっとしたミスによっては順位の入れ替わりが可能な得点差である。日本代表内定に向けて、NHK杯がまさに最終決戦の場にふさわしい舞台となる模様だ。

◆女子は村上茉愛が安定した試合運びで連覇達成

女子は昨年12月に続いて、村上茉愛が全日本個人総合選手権連覇(5度目)を達成。4種目によって争われた個人総合で、村上は跳馬、段違い平行棒、床で14点台と安定した試合運びを見せた。

2016年からの6大会で5回、全日本個人総合選手権を制している「日本のエース」村上は、2018年世界選手権で銀メダルに輝き、東京五輪が競技人生の集大成と位置付けていた。2019年5月に腰痛で戦線離脱し、その後コロナ禍に入りながら2020年9月の全日本シニア、12月の全日本個人総合選手権を制していたが「強くなっているのか」という疑問が消えていなかった。

しかし、全日本個人総合選手権決勝で構成を変えていた平均台で落下しても、「クヨクヨしている場合ではない」と、他の3種目で自分の演技をやり通し、後続に2点差をつけて最終選考のNHK杯に繋げることができた。

村上は審判講習会に参加しながら自分の動きを見つめ直し、細かい減点箇所も確認して貪欲に得点加算へこだわった。この後のNHK杯、その先の五輪本番でも貪欲さを継続できればメダルも期待できるだろう。

2位には2年連続で畠田瞳、3位には2014年世界選手権代表の平岩優奈。2019年世界選手権代表の杉原愛子が4位に飛び込んだ。NHK杯のボーダーラインとなる3位と4位の差はわずか0.133。5位の相馬生までも0.8と1点以内に3人がひしめき合い、6位には3大会連続の五輪を狙う寺本明日香が控えている。こちらも男子同様、ひとつのミスや大技の成功によっては順位が入れ替わる可能性が高い。女子の代表内定争いからも目が離せない。