第60回NHK杯体操は村上茉愛と橋本大輝が優勝、内村航平は鉄棒で東京五輪を目指す

文: マンティー・チダ

Tokyo2020(東京五輪)日本代表選考会を兼ねた「第60回NHK杯体操」(長野県長野市・ビッグハット)は、5月15日に女子個人総合、16日に男子個人総合を実施。女子は村上茉愛が4年ぶり3回目、男子は橋本大輝が初優勝を飾った。

持ち点(4月に行われた全日本個人選手権予選・決勝合計得点)と本大会の合計得点の成績で、最高得点獲得者に対し60回目となるNHK杯が贈られた。村上と橋本は全日本選手権で優勝し、トップからスタート。両選手は本大会での逆転を許さず、男女とも逃げ切りでの決着となった。

◆村上茉愛がエースの演技で制覇し畠田瞳、平岩優奈、杉原愛子とともに代表内定...寺本明日香は補欠でチームに帯同

持ち点で2位の畠田瞳に約2点リードした状況で、村上はNHK杯に臨んでいた。ミスなく演技ができればトップ通過はほぼ間違いなく、世界と戦うためにも内容が求められる大会だった。

2種目目の段違い平行棒であわや落下とヒヤリする場面もあり、その時は片手で棒を握って難を逃れた。全日本個人総合選手権で落下した平均台では、その原因となった側方宙返りを前方抱え込み宙返りへ変更。演技構成をより確実性の高いものに切り替えた。最後の床運動は、全選手でただ1人の14点台。大会直前には左膝を負傷していたが、エースらしく大崩れすることは無かった。

リオデジャネイロ五輪では個人総合6位に入賞していたが、集大成と位置付けるTokyo2020(東京五輪)へのスタートを切ったのは、リオデジャネイロからの帰国日。しかし、2019年世界選手権は持病の腰痛が悪化し、歩くのもままならず代表から外れていた。

様々な経験を踏まえて、村上は「五輪金メダルが目標」と掲げる。目標に向かって、村上は課題でもある平均台の克服を目指していた。選考会では跳馬の大技「チュソビチナ」を回避しているため、得点の伸び代は期待できる。24歳はベテランの域だが、最年長のエースが体操ニッポン女子を引っ張っていく構えだ。

2位の畠田瞳、3位の平岩優奈も代表内定となり、五輪初出場を決めた。残されていた最後の1枠は4位に入った杉原愛子。リオデジャネイロ五輪に続き、2大会連続の五輪出場となった。3大会連続五輪出場を目指していた寺本明日香は5位となり、団体の補欠メンバーとしてチームを支える。

◆橋本大輝が萱和磨の猛追をかわして優勝、ともに代表内定

男子は全日本個人総合選手権覇者の橋本が初優勝。2位には萱和磨が入り、リオデジャネイロ五輪から選手が一新されることになりそうだ。

持ち点で萱を約0.6点リードして今大会に臨んだ橋本。床は全選手トップの14.300点、あん馬も14.733点と好スタート。得意の跳馬では、難易度の高い技を決めて15.533点の高得点を叩き出した。つり輪、平行棒、鉄棒ではやや低調な成績に終わるが、持ち点のアドバンテージを生かして、萱をわずか0.136点差で振り切り優勝。萱と共に代表内定を勝ち取った。

男子も女子同様に団体戦のメンバーは4人。団体戦残りの2人と種目別の代表は、6月に行われる全日本体操競技種目別選手権大会までの成績で決まる。日本体操協会の水島寿思強化本部長は「選手によって大なり小なり課題はあったが、代表争いには残るべき選手が残っている印象がある」とNHK杯を振り返った。

特に橋本は昨冬から難度の高い演技構成を練り、成長を遂げている。「絶対に1位通過で代表に内定し、日本のエースとして五輪金メダル獲得に向けて貢献したい」と本大会を意識したコメントをしていた。五輪本番まであと2か月余りであるが、橋本はまだまだ成長できる余地を十分に残しているだろう。

◆内村航平は鉄棒で15点台とするが内容には不満も

種目別の鉄棒で4大会連続五輪出場を狙う内村航平は、今回もH難度のブレトシュナイダーなどを決めて、15.333点と高得点を叩き出すも「自分が目指していたものとは違った。全然納得していない」と内容には満足していなかった。

今大会で日本体操協会が作成している暫定世界ランキング1位得点を上回り、40ポイントを加算。跳馬の米倉英信と並び首位で、6月の全日本体操競技種目別選手権大会を迎えるが、内村はあくまでも「自分が満足できる演技」を目指している。

求めている演技ができたときに初めて五輪や金メダルという言葉を意識するのだろう。ロンドン、リオデジャネイロ五輪で個人総合2連覇を達成している内村は、より高いレベルを見据え鉄棒と向き合っている。