田中希実:独自路線で東京五輪内定のニューヒロイン|コーチは父親…母親もマラソンで優勝の経験【アスリートの原点】

立て続けに2種目で日本記録を更新

文: オリンピックチャンネル編集部

田中希実(たなか・のぞみ)は2020年7月に開催されたホクレンディスタンスチャレンジ深川大会の女子3000メートルで8分41秒35を記録。同年8月のセイコーゴールデングランプリ陸上・東京の女子1500mでは4分05秒27を記録した。ともに日本新記録。女子3000mの日本記録更新は2002年の福士加代子、女子1500mは2006年の小林祐梨子以来となる。

Tokyo 2020(東京五輪)日本代表選考会を兼ねた同年12月の第104回日本陸上競技選手権大会・長距離種目では、女子5000mで優勝。すでに東京五輪の参加標準記録を突破していたため、田中は東京五輪の日本代表に内定する。翌年1月の日本陸上競技連盟(JAAF)年間表彰「アスレティックス・アワード2020」では優秀選手賞に輝いた。彼女の現所属は「豊田自動織機Track Club」。彼女が通う同志社大学の陸上部でも、いわゆる実業団の豊田自動織機女子陸上競技部でもない。“独自路線”を進む田中の原点に迫る。

2020年に女子1500mと女子3000mで日本新記録。期待の新星として注目される

両親とも陸上競技経験者…アスリート一家に育つ

田中希実は1999年9月4日、兵庫県小野市に生まれた。

母の千洋(ちひろ)さんは、1997年と2003年の北海道マラソンで優勝した経験のあるトップアスリート。そして千洋さんを指導していたのが、希実の父親となる健智(かつとし)さんだ。健智さんも日本選手権の3000m障害に出場した経験を持つアスリート。両親ともアスリートの希実は、3歳の時に地元で開催されたロードレースのファミリー部門に出場、これが陸上競技者としてのデビューだった。初めての海外旅行も3歳。ホノルルマラソン(アメリカ合衆国ハワイ州)に参加する母親に連れられて、というものだった。

ただし最初からトップアスリートを目指していたわけではない。希実にとっては遊びや趣味、あるいは大会を主催する両親の手伝いの延長線上、あくまでも楽しんで走るという感覚だった。

競技者として自覚を持ったのは小学5年生の頃。本格的に練習へ取り込むと、小学6年生の時に参加したゴールドコーストマラソン(オーストラリア連邦クイーンズランド州)のジュニアダッシュ(4km)で優勝する。中学では陸上部に所属し、3年生の時には香川県で開催された全国中学校体育大会の女子1500mで優勝するなど、結果を残した。

中学卒業後は陸上、特に駅伝の強豪として知られる兵庫県立西脇工業高等学校へ進む。高校3年生の時には皇后盃全国都道府県対抗女子駅伝競走大会で兵庫県の優勝に貢献。田中はのちに、同じ兵庫県小野市出身で女子1500mの前日本記録保持者・小林祐梨子が高校時代に残した記録が発奮材料の1つだったと振り返っている。

2018年7月にはU20世界陸上競技選手権大会の女子3000mで優勝。世界で戦える手応えを得た

独自路線で日本新記録、東京五輪内定を手に

高校在学時からすでに、田中は注目の存在となっていた。彼女の選択は同志社大学スポーツ健康科学部への進学。ただし大学陸上部ではなく、クラブチームに所属。尼崎市を拠点とするND28AC(アスリートクラブ)を経て、現在は豊田自動織機TCでトレーニングを重ねている。

豊田自動織機TCは、全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝)に出場する豊田自動織機女子陸上競技部とは別組織だ。豊田自動織機の公式サイトによれば、2019年4月に「女子陸上選手個人の活動をサポートするために設立した陸上クラブ」とのこと。そして田中を指導するのは父親、田中健智コーチだ。

独自路線を選んだ田中だったが、2018年は第18回アジアジュニア陸上競技選手権大会、第17回世界U20陸上競技選手権大会の女子3000mで優勝を収める。2019年も第102回日本陸上競技選手権大会クロスカントリー競走シニア女子キロで優勝したほか、第103回日本陸上競技選手権大会の女子1500mで2位、女子5000mで4位。世界陸上選手権ドーハ大会の日本代表として女子5000mにも出場した。

そして2020年には日本記録を更新。東京五輪でも日本陸上界の新たな歴史を切り開く。

選手プロフィール

  • 田中希実(たなか・のぞみ)
  • 陸上中長距離
  • 生年月日:1999年9月4日
  • 出身地:兵庫県小野市
  • 身長/体重:153センチ/41キロ
  • 出身校:小野南中(兵庫)→西脇工高(兵庫)
  • 所属:豊田自動織機TC(同志社大学在学中)
  • オリンピックの経験:なし

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