渡名喜風南:「死ぬこと以外、かすり傷」と心に刻む148センチの世界女王。負けん気の強さで突き進んできた柔道人生【アスリートの原点】

少女時代の憧れはミルコ・クロコップ
文: オリンピックチャンネル編集部

2017年、柔道女子48キロ級の渡名喜風南(となき・ふうな)は初出場となった世界選手権で優勝を果たすと、以降は2年連続で銀メダルを獲得した。2018年、2019年のグランドスラム大阪でも優勝という結果を残し、2020年2月に東京五輪出場を内定させている。148センチという小柄な体からは想像がつかない、勝気な素顔に迫る。

格闘技好きの父の影響から小5で道場へ

渡名喜風南(となき・ふうな)は1995年8月1日、3人の姉に見守られながら産声をあげた。神奈川県相模原市で生まれているが、両親は沖縄県出身だ。

父の庸吉さんが総合格闘技好きだったこともあり、テレビ中継を通して自然と格闘技に興味を持った。幼いころから活発でおてんば、短髪でボーイッシュ。自称「野生児」だった少女は、K-1選手として活躍するミルコ・クロコップの強さに憧れていたという。

柔道との出合いは小学校5年生の時だ。知人の紹介で、相模原市の相武館吉田道場を見学すると「これこそ自分がやりたかったこと」と直感した。厳しい練習で知られていた道場だったが、その日のうちに道着に袖を通し、競技にのめり込んだ。負けず嫌いで物怖じせず、男子にも立ち向かっていく。勝気な一面も併せ持っていたため、相手を投げ飛ばしていく柔道がしっくりきたのだろう。決して諦めない粘り強さは間違いなく、このころから備わっていた。

相原中学校2年次には全国中学校柔道大会に出場。中学卒業後は東京都の修徳高等学校への進学。高校在学中にめきめきと実力をつけ、2年次に全日本ジュニア柔道体重別選手権大会で3位、3年次には全国高等学校総合体育大会(インターハイ)と全日本ジュニア柔道体重別選手権大会で2位の成績を収めている。アジアジュニア・ユース選手権大会では頂点に立ち、48キロ級で将来を嘱望される存在へと成長していった。

2018年11月のグランドスラム大阪で優勝(左から2人目)。決勝ではモンゴルの実力者ウランツェツェグ・ムンフバット(左端)を下している

大学で味わった挫折と、それを救った母の言葉

2014年、強豪・帝京大学に進むと、悔しさを味わうことが増えていった。

大学1年の全日本ジュニア選手権では1回戦敗退。そんな時に自身を救ってくれたのが、座右の銘でもある「死ぬこと以外、かすり傷」という言葉だった。落ち込んでいた時に母が伝えてくれたのだという。「勝てなくても今やっていることを続けよう」という吉田道場での教えとも重なる部分があった。目の前の成績に一喜一憂せず、常に挑戦者の気持ちで挑んでいくと心に決めると、2年次の2015年には世界ジュニア柔道選手権大会でオール一本勝ちで優勝の偉業。講道館杯全日本柔道体重別選手権大会、柔道グランプリ・青島を制覇し、国際舞台でも結果を出せるようになった。

そしてついに2017年に念願だった「世界女王」の称号を得る。ブダペスト世界柔道選手権大会で、初出場の世界選手権ながらいきなり表彰台の頂点に立ってみせた。決勝戦では48キロ級で世界屈指の実力者、モンゴルのウランツェツェグ・ムンフバットを一本勝ちで下している。翌2018年からは最大のライバル、ウクライナのダリア・ビロディドに屈し世界選手権は2年連続で2位。以降はビロディド対策が課題となっていった。

約25センチの身長差がある相手を攻略できなければ、東京五輪でも表彰台の頂点は見えてこない。コロナ禍で思うようにトレーニングができない今は我慢の時期が続く。それでも、不自由な状況でもできることを見つけるプロセスは試合に生かす。「いつでも戦う覚悟、準備はできています」。2020年7月25日、自身のインスタグラムに記した言葉には、幼いころから変わらない気の強さが表れている。

選手プロフィール

  • 渡名喜風南(となき・ふうな)
  • 柔道女子 48キロ級選手
  • 生年月日:1995年8月1日
  • 出身地:神奈川県相模原市
  • 身長/体重:148センチ/48キロ
  • 出身校:相原小(神奈川)→相原中(神奈川)→修徳高(東京)→帝京大(東京)
  • 所属:パーク24
  • オリンピックの経験:なし 
  • インスタグラム(Instagram):渡名喜 風南(@funatonaki)

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