写真: 2015 Getty Images

森脇唯人:極真空手を経てボクシング転身で開花。東京五輪ミドル級のメダル候補に【アスリートの原点】

全日本ボクシング選手権大会で3連覇
文: オリンピックチャンネル編集部

2021年2月11日、ボクシングのチャリティーイベント「LEGEND」に出場した森脇唯人(ゆいと)は、WBOアジアパシフィックスーパーウェルター級王者の井上岳志と3分3ラウンドのエキシビションマッチを行った。アマチュアの森脇はヘッドギアを着用せず、プロを相手に持ち前のスピードのあるボクシングをみせた。その姿は、東京五輪に向けて大きな期待を抱かせるものだった。

極真空手から長身をより活かせるボクシングへ

ロンドン五輪のボクシング男子ミドル級で金メダルを獲得し、WBA世界ミドル級スーパー王者に昇りつめた村田諒太が「今、(試合のテンポの速い)アマチュアルールで対戦したら彼に勝つのは難しい」と称賛を送る逸材は、1996年8月8日、東京都足立区で生まれた。森脇唯人(ゆいと)のボクシングの下地となったのは、小学5年で始め、中学3年まで続けた極真空手だった。

寸止めで試合をする伝統派空手と違い、極真空手ではフルコンタクトが認められている。ただし、首から上への打撃は反則。本人は「身長が高いので、よく顔に(打撃を)当ててしまった」と振り返ったことがあるが、同年代の中で日本人離れした体格が悩みの種となってのめり込むことはできなかったという。「区の大会で1回戦負け程度だった」と回顧するように、顕著な成績も残していない。

ただ、格闘技は好きだった。「もともと、ボクシングやキックボクシングには興味があった」ことから、高校進学を機にボクシングへの転向を決意する。極真空手では反則だった首から上への打撃が勝利につながる競技だ。

ボクシングの名門として知られる駿台学園高等学校の定時制に入学。校内にジムの設備があり、全日制の部員と合同で大会にも出場できた。入学前から練習に参加するほか、チームメートが通っていた地元の東京・足立区にあるワールドスポーツボクシングジムにも入会して、ひたむきにボクシングに取り組んでいった。同ジムはのちに森脇が『LEGEND』で対戦することになる井上岳志も所属していた。7歳上の井上は森脇にとって高校、大学の先輩にもなる。

大学時代にファイトスタイルが進化

高校3年次の2014年にはインターハイ(全国高等学校総合体育大会)に出場し、ミドル級で3位入賞を果たした。高校卒業後には、駿台学園の先輩である頴川徳夫氏が監督を務める法政大学に進学。対戦環境の変化もあり、ボクシングの戦い方も、高校時代の激しく打ち合うスタイルから一転、足を使い、距離感を保ちながら戦うスマートなスタイルへと変化させた。長いリーチから繰り出される鋭いパンチをさらに生かせるようになった。

全日本ボクシング選手権大会では2017年の第87回大会から3連覇を飾った。大学3年次の2018年にはロシア国際トーナメントに出場して銅メダルを獲得するなど、国際舞台でも存在感を発揮。村田諒太がロンドン五輪で金メダルを獲得した時、まだボクシングを始めて数カ月の少年だった森脇だが、今では名実ともにその後継者になりつつある。

大学卒業後の2019年、体育特殊技能者として自衛隊体育学校に進んだ。男子ライト級の成松大介、女子フライ級の並木月海や他競技の選手らとともに、五輪でのメダル獲得を目指すスポーツエリートとして、競技に専念する日々を送っている。

2020年3月の東京五輪アジア・オセアニア地区予選で1回戦を突破し、開催国枠での東京五輪出場権を手にした。2021年の東京五輪の本大会では、男子ミドル級の決勝は誕生日の前日となる8月7日に予定されている。掲げる目標は「五輪金メダルと世界選手権優勝の“世界2冠”」。まずは金メダリストとして25歳の誕生日を迎えることができるか、注目が集まる。

選手プロフィール

  • 森脇唯人(もりわき・ゆいと)
  • ボクシング選手 男子ミドル級
  • 生年月日:1996年8月8日
  • 出身地:東京都足立区
  • 身長:188センチ
  • 出身校:江北小(東京)→江北中(東京)→駿台学園高(東京)→法政大(東京)
  • 所属:自衛隊体育学校
  • オリンピックの経験:なし
  • インスタグラム(Instagram):森脇唯人(@y_moriwaki_888)

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