【柔道】阿部一二三、ウルフアロン、原沢久喜。東京五輪で金メダルを見据える選手たち

文: マンティー・チダ

Tokyo 2020(東京五輪)柔道競技は7月24日から始まる。ここでは男子で注目される階級をピックアップして紹介する。

◆体幹の強さを生かして金メダルを目指す阿部一二三

66キロ級には阿部一二三が登場。これまで3度の世界選手権で金メダル2個と銅メダル1個を獲得してきた。グランドスラムでも9回の優勝を誇るなど、国際大会では驚異的な勝率をマークしており、優勝候補の筆頭としても申し分ないだろう。

阿部は第4シードでの出場となった。阿部より上位のシード選手は、第1シードのマヌエル・ロンバルド(イタリア)、第2シードのアン・バウル(韓国)、第3シードのバジャ・マルグベラシビリ(ジョージア)。仮にシード順で勝ち上がれば、準決勝で阿部はロンバルドと対戦することになりそうだ。ロンバルドとの対戦成績は1勝1敗となっている。

阿部は背負い投げが得意で、体幹の強さは世界トップレベルと言われているため、爆発的な力を生み出すことが可能だ。相手よりコンマ1秒先に反応ができて、相手の重心を崩しながら技をかける体勢に持ち込むのが必勝パターンである。

それを試合で早くつかめば、より良い色のメダルを狙えるだろう。今年4月のグランドスラム・アンダルヤでも優勝と、ここまでは順調に来ている。「力を出し切れば金メダルが取れる」と試合終了後に阿部はコメントしていた。その言葉通りの活躍ができれば、日本柔道界に吉報が届くはずだ。

◆強敵が揃う100キロ級で井上康生以来の金を狙うウルフアロン

100キロ級には、ウルフアロンが出場する。リオデジャネイロ五輪では羽賀龍之介がこの階級で銅メダルを獲得した。2017年4月の全日本体重別選手権決勝で激闘の末にメダリストの羽賀を下して、ウルフは大会2連覇を達成、2017年の世界選手権の切符を手にした。

ウルフは、その世界選手権でリオデジャネイロ五輪100キロ級銀メダリストのエルマール・ガシモフ(アゼルバイジャン)、当時世界ランキング1位のミカエル・コレル(オランダ)といった強豪を続けて下す。

決勝ではリオデジャネイロ五輪90キロ級銀メダリストのバルラム・リパルテリアニ(ジョージア)と対戦し、ゴールデンスコアまでもつれながら、大内刈りで技ありを取って優勝。世界選手権を制したことで、東京五輪金メダル有力候補へ名乗りを上げた。

ウルフはゴールデンスコアまで持ち込むと、無類の強さを発揮する。これは「ウルフタイム」と呼ばれているが、必ずしも全てにおいてメリットではない。通常は4分間で試合が終わるはずだが、ゴールデンスコアまでもつれると、どちらかがポイントを獲得するまで試合が続くため、体力の消耗をともなう。

そして、東京五輪ではウルフの前に強敵が立ちはだかる。2019年世界選手権金メダルのジョルジェ・フォンセカ(ポルトガル)、リパルテリアニ、コレル、チョ・グハム(韓国)と実力者が勢ぞろい。

メダル獲得のためには、これらの選手から勝利することが必要になる。「ウルフタイム」にこだわり過ぎると、大事な試合で本来の力を出し切れない可能性がある。4分間で決着をさせてトーナメントを勝ち上がれば、井上康生以来の100キロ級金メダルは射程圏内になるだろう。

◆原沢久喜、念願の金メダル獲得へ王者リネールに挑む

最重量級となる100キロ超級には、前回のリオデジャネイロ五輪で銀メダルに輝いた原沢久喜が、2大会連続で出場する。目指すは、前回獲得できなかった金メダルだ。

その金メダル獲得を阻んだのが、五輪連覇を果たしたテディ・ルネール(フランス)。リオデジャネイロで初対戦となった両雄だが、開始早々に指導を受けた原沢がペースを乱す。極端な防御姿勢を取ったとして2つ目の指導まで受けた。この指導が最後まで影響し、リネールに敗れた。

東京五輪で3連覇を狙うリネールだが、今回はノーシードからの戦いとなった。リオデジャネイロ五輪以降、原沢はリネールとグランプリ・モントリオール2019で対戦し、ゴールデンスコアまでもつれて、大外刈りの技ありでリネールに敗れている。念願の金メダル獲得へはリネールに初勝利することが絶対条件だ。

他には、2021年世界選手権銀メダルのタメルラン・バシャエフ(ROC)、マスターズ2021で苦杯をなめたヤキフ・ハンモ(ウクライナ)にも注意が必要だ。原沢の雪辱に期待したい。