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柔道男子73kg級:大野将平が日本人で7人目の2大会連続五輪金メダルを狙う

文: マンティー・チダ

東京五輪に出場する柔道の日本代表選手で唯一、2大会連続金メダル獲得に挑む選手がいる。男子73㎏級の大野将平だ。2016年のリオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得してから5年。東京五輪ではどのような戦いを見せるのだろうか。

◆連続で五輪金メダルを獲得した日本人選手は6人だけ

柔道日本代表はこれまでの五輪で84個のメダルを獲得し、そのうち金メダルは39個を数える。「お家芸」と呼ぶにふさわしい結果を日本勢は残してきた。

ただ、連続での金メダル獲得になると人数は限られたものとなる。過去最高は野村忠宏の3大会連続。斉藤仁、谷亮子、内柴正人、谷本歩実、上野雅恵の2大会連続と合わせて、これまで6人しか成し遂げていない。大野将平は東京五輪でこの偉大な記録に挑戦する。

大野は7歳で柔道を始めた。世田谷学園高校在学時にインターハイを制すると、卒業後には天理大学へ進学。大学2年生で出場した2011世界ジュニア選手権優勝を果たすと、2012年にはグランドスラム大会初優勝と着実に階段を上っていった。2013年には世界選手権代表に選出され、ロンドン五輪メダリストをはじめ世界で実績を残す選手を下す快進撃、オール一本勝ちの金メダル獲得を成し遂げ、順調に五輪への道を歩んでいた。

天理大学卒業後、大野は旭化成に所属。4月の選抜体重別選手権大会で初優勝とすると、2大会連続で世界選手権に選出。残念ながら4回戦で姿を消すが、2015年の世界選手権では、40年ぶりの日本人対決を制して2大会ぶりの世界選手権優勝を果たした。

◆リオデジャネイロ五輪で日本男子2大会ぶりの金メダル

そして、2016年のリオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得。2回戦から登場し、3回戦ではロンドン五輪金メダリストのラシャ・シャフダトゥアシビリ(ジョージア)を腰車で下すと、決勝ではルスタム・オルジョフ(アゼルバイジャン)を小内巻込みで一本勝ち。日本男子柔道に2大会ぶりの五輪金メダルをもたらした。ここまで2度の世界選手権を制していることから、勝つのが当然という周りの声が大野の耳にも届いていたようだ。「当たり前のことを当たり前にやる難しさを味わった」というコメントを残している。

リオデジャネイロ五輪では、勝ち上がりの内容が評価され、ソウル五輪銅メダリストの山口香氏は、大野の活躍ぶりに対し「これほどの強さを満座の前で示した日本の柔道家を見るのはいつ以来だろうか」と賛辞を送った。特に接近戦では外国人選手と互角の試合ぶりを見せつけた。大野は金メダルを獲得した後のインタビューで「五輪はいつもの国際大会と変わらない」と答えていたが、この発言は選手として簡単にはできないはずだ。

五輪は4年に1度しか開催されないため、その重みはいつもの国際大会を上回る。それでも「いつもと同じ」と答えるあたり、多くの練習を積んだことによる自信なのだろう。こうして、大野は世界の頂点に立つことができた。

◆2019年世界選手権で3度目の金メダル獲得、万全を期して東京五輪へ

リオデジャネイロ五輪後、大野は大学院での修士論文の作成を優先させるため、2017年全日本選抜体重別選手権の出場を見送る決意をした。12月には五輪以来の国際大会に復帰するが、大会前に右ヒザを負傷したこともあり、初戦勝利後に棄権。しかし、2018年には2つのグランドスラム大会に優勝するなど、調子を上げ、2019年には4度目の世界選手権出場。6試合オール一本勝ちで3度目の金メダルを獲得した。

2020年2月のグランドスラム・デュッセルドルフでは4回戦でリオデジャネイロ五輪66㎏級金メダルのファビオ・バシレ(イタリア)、決勝では安昌林(韓国)を下して優勝。2019年世界選手権を制覇した実績も買われ、東京五輪代表に内定した。

東京五輪は1年延期となったが、大野はここというタイミングや時期に、しっかりとコンディションを整えることができる選手だ。2016年リオデジャネイロ五輪以降、大野は個人戦で7つの国際大会へ出場し、棄権した1大会を除き、6大会で優勝。今回は五輪2大会連続金メダルがかかっているが、「五輪はいつもの国際大会と変わらない」という気持ちで臨むことができれば、自ずと結果がついてくるだろう。