新型コロナにより加速するスポーツのデジタル化…アスリートの能力を反映した仮想大会も

リアルスポーツ界でもデジタル機器とネットを用いた試みが具現化
文: 渡辺文重

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、世界経済は大打撃を受けている。中でも、不特定多数の観客が集うスポーツは、イベント開催はもちろん、チームで練習するなどの活動も停止するなど、危機的状況を迎えている。この窮地を脱するべく、新たな取り組みが行われている。

eスポーツの規模は年を追うごとに大きくなっている

ここではエレクトロニック(e)スポーツや、インターネットなど通信技術を使った競技のオンライン化、最新テクノロジーを利用したエンターテインメントの可能性などを紹介する。

■eスポーツの潮流、スポーツとの融合

いわゆる運動競技などの「スポーツ」と、チェスや将棋などの「マインド(頭脳)スポーツ」。「eスポーツ」は、その中間に位置するものと考えれば分かりやすい。eスポーツは、マインドスポーツの要素を多く持っているものの、競技者同士のレベルが高くなれば、反射神経や指の動作速度、瞬時の判断、チームワークなど、スポーツと同様の能力が求められるからだ。

eスポーツは1990年代、コンピュータの普及や通信技術の発展を背景に、アメリカ合衆国で自然発生的に行われた「LANパーティー(共有スペースに持ち込んだPC同士をLANケーブルでつないでのローカルネットワーク環境)」が起源だとされている。日本においては1991年にアーケードゲームとして「ストリートファイターII(カプコン)」が稼働を開始。さまざまな大会が開かれるなど、この時代に「eスポーツ」の萌芽が見られたことは間違いない。

2000年代になると大規模な国際的イベントも開催されるようになり、賞金も高額化する。シューティングゲームや格闘ゲームだけでなくカードゲーム、レーシングゲームなども採用されていく。

こうした潮流にリアルスポーツ界も注目。日本でも2018年より、Jリーグがサッカーゲームを競技種目とした「明治安田生命eJ.LEAGUE」を開催するなど、スポーツとeスポーツの融合は進められている。

【スポーツ団体によるeスポーツ】

明治安田生命eJ.LEAGUE

FIFA eWorld Cup 2020

eBASEBALL プロリーグ

NBA 2K League

■デジタルチャリティーマッチ

野球やサッカーなど、実在する運動競技をテーマとしたゲームであったとしても、eスポーツの舞台に立つのは、やはりeスポーツの選手たちとなる。しかし、チャリティーマッチなどの舞台ではしばしば、運動競技の選手たちが、その競技をテーマとしたeスポーツの舞台に登場することがある。

例えば北米プロバスケットボールリーグNBAでは、現役選手が参加するビデオゲーム「NBA 2K20」の競技大会、「NBA 2Kプレイヤー・トーナメント」を実施。ワシントン・ウィザーズの八村塁らが参加した大会は、デビン・ブッカー(フェニックス・サンズ)の優勝で幕を閉じた。ブッカーは優勝賞金10万ドル(約1080万円)をアリゾナ・フードバンク・ネットワークへ寄付している。

新型コロナウイルスの影響で中止となった男女共催のプロテニストーナメント「ムチュア・マドリード・オープン」は、ビデオゲーム「Tennis World Tour」を用いたeスポーツ大会を4月27日から開催。ラファエル・ナダルやキキ・バーテンズといった現役のトッププレーヤーが参加し、優勝賞金などの寄付を行うとしている。

後述の「バーチャルレース」にも関連するが、北京五輪トライアスロン金メダリストのヤン・フロデノ(ドイツ)が自宅でアイアンマンチャリティレース実施し、約2400万円を集めたことも話題となった。

このチャレンジでフロデノは、自宅の流水プールでの3.8キロと、スマートトレーナーのひとつである「Zwift」を用い、自転車で180キロ、ランニングで42キロを走りきった。

北京五輪トライアスロン金メダリストが自宅でチャリティレース実施|約2400万円集まる

■バーチャルレース

優れた運動選手が、優れたeスポーツのプレーヤーであるとは限らない。そのため、運動選手の能力を最大限に反映できる試みも行われている。例えば3月に行われた「名古屋ウィメンズマラソン2020」はエリートの部のみの開催となったが、一般の部は「オンラインマラソン」として実施された。これはスマートフォン用アプリケーション、あるいはGPSウオッチを用いて、期間内に42.195キロを完走するというものだ。同様の仕組みを用いて、ケニヤでは仮想ハーフマラソン大会も行われている。

NBAでは「NBA 2Kプレイヤー・トーナメント」とは別に、「NBAホースチャレンジ」を開催。別々の会場にいる現役やOBの男女トッププレーヤーが、TV中継を用いてシュートのテクニック披露。1対1で勝敗を決するコンテストとなっている。現地時間4月16日に準決勝・決勝が行われ、ユタ・ジャズのマイク・コンリー・ジュニアが同コンテストを制した。

自転車ロードレースでは、スマートトレーナーを用いたプロ参加のバーチャルレースも行われている。ベルギーで開催される「ツール・ド・フランダース(ロンド・ファン・フラーンデレン)」は4月5日、13人のプロレーサーがそれぞれの拠点より参加。CCCチームのフレフ・ファン・アヴェルマート(ベルギー)の優勝で幕を閉じた。

そして4月22日からの5日間、「ツール・ド・スイス」のバーチャルレース「デジタル・スイス5」が開催される。

ツール・ド・スイスは、スマートトレーナーなどを用いたバーチャルサイクリングサービス「ROUVY」、ワールドツアーチームが共同出資した合弁会社「Velon」と協力して仮想レースを開催。この模様は、オリンピックチャンネルでも配信される。

ザ・デジタル・スイス5 ROUVY - ツール・ド・スイス

招待チームは以下の通り。各チームとも3人のライダーが参加する。

  • AG2R ラ モンディアル
  • ボーラ=ハンスグローエ
  • CCCチーム
  • ドゥクーニンク=クイックステップ チーム
  • EFエデュケーションファースト プロサイクリング
  • グルパマ=FDJ
  • イスラエル スタートアップ ネイション
  • ロット ソウダル
  • ミッチェルトン=スコット
  • モビスター チーム
  • NTTプロサイクリング
  • ラリー サイクリング
  • チーム イネオス
  • チーム ユンボ=ヴィスマ
  • チーム サンウェブ
  • トタル ディレクト エネルジー
  • トレック=セガフレード
  • スイス代表チーム

参考:WORLD PREMIERE: THE DIGITAL SWISS 5 - Digital pro cycling race of the Tour de Suisse

■まとめ: スポーツのデジタル化は加速する

世界各国では新型コロナウイルスの感染拡大により、スポーツイベントを含む大規模集会の開催が規制されている。スポーツ界にとっては、まさに逆風といえる事態だが、スポーツのデジタル化という観点に立てば、追い風となっている。eスポーツ、そして最新機器を用いたバーチャル大会。これら新たな潮流が、スポーツの新たな可能性を示していることは間違いない。トレーニング面でも同様にオンラインでの管理やティーチングなどが本格化し、世界中でニュースとして目にするようになってきている。ただし、こうしたデジタル化は、スポーツの持つ本来の魅力を損ねるものではない。一刻も早い新型コロナウイルスの収束、スポーツイベントの再開が望まれる。