入江聖奈:親に隠れてパンチの練習をした日々から、ボクシング女子初五輪内定者へ【アスリートの原点】

小学2年次から名門ジムに通い、実力発揮

文: オリンピックチャンネル編集部

東京五輪ボクシング女子フェザー級代表の入江聖奈(せな)。2012年のロンドン五輪から追加された女子ボクシングにおいて、日本女子初内定を勝ち取った。日本体育大学に所属する21歳の若き才能は、鳥取県の自然豊かな地でのびのびと育ち、男子に交じってのトレーニングで力をつけてきた。(画像は時事)

「暇つぶし」で出合ったボクシング漫画がきっかけ

1970年代に人気を博した『がんばれ元気』という漫画がある。5歳児の主人公・堀口元気が、かつてボクサーであった父親に憧れ、ボクシングの才能を開花させていく物語だ。

2000年生まれの入江聖奈(せな)にとっては、世代というよりも時代の違う漫画と言える。だが、小学2年生の時、「暇つぶし」で偶然に同作と出合った入江少女は、主人公に感化され、ボクシングに興味を持った。初めは親に「ボクシングをやりたい」と言い出すことができず、隠れながら漫画の見よう見まねでパンチの練習をしていた。次第にボクサーになることへの思いが強まっていき、ついに両親に打ち明けたところ、当初は母親から反対された。

しかし、それでも抑えきれない思いを母親に認めてもらうと、入江は地元・鳥取県米子市で唯一のボクシングジム、シュガーナックルボクシングジムに通い、本格的な練習を積むようになった。

山陰地方の名門である同ジムでは、パンチの型を基礎から教わった。最初は「全然おもしろくなくて、やめようかなと思った」というが、伊田武志会長(現日本ボクシング連盟女子強化委員長)からスパーリングの指導を受けるようになると、ボクシングの楽しさにのめり込んでいった。

小学5年生の頃から東京五輪の招致活動が本格化し、入江の中では「オリンピック」の文字が明確な目標として描かれるようになった。ボクシングは2012年のロンドン五輪で女子種目が加わったばかりだった。

それと期を同じくするように入江は才能を開花させる。中学生以下の全日本アンダージュニアボクシング大会を4連覇、2014年、2015年のUJ王者決定戦も連覇。日本代表合宿に参加するなど、14歳の頃には地元新聞紙に採り上げられ、この時点で将来の夢として「東京五輪で金メダルを取る」と口にしていた。

挫折は高校1年次。インターハイで公式戦初黒星

シュガーナックルボクシングジムには高校を卒業するまで10年間通い続け、男子選手に交じりながら得意の左ジャブなどの技を磨いた。練習量の多さが入江の強みだった。

リングを下りれば喧嘩もしない穏やかな性格。ボクシング以外では小学生時代からリレー競技で地区大会にも出ていた。中学時代、学校では陸上部に所属し、1年次には800メートルを専門種目として全国中学駅伝に出場するなど、仲間との絆やチームプレーも好んだ。

もっとも陸上もボクシングのための体つくりの一環だった。小中学校の同級生で、現在ともに日本体育大学に在籍する、女子3メートル板飛び込み東京五輪代表内定の三上紗也可は、中学陸上部での入江について、その当時マスクをして走る理由を聞いた際、「ボクシングに必要だから」と返されたという。心肺機能の強化を意図していたのだろう。

強くなる過程でのターニングポイントは高校1年次のインターハイ(全国高等学校総合体育大会)だ。2学年上の並木月海(つきみ/現フライ級東京五輪代表内定)に0-3の判定負け。優勝候補と目されていた入江にとって、これが公式戦初黒星だった。

以降、「練習をすべて見つめ直した」入江は、悔しさをバネに奮起して全日本ジュニア選手権を制覇。高校2、3年ではインターハイ連覇を達成した。階級変更後、並木とは合宿で練習や食事をともにする仲となり、東京五輪の代表内定同士、互いに良い刺激を与え合っている。

最初は競技を始めることに反対していた母親も、今では良き理解者だ。東京五輪に挑む自分を誰よりも応援してくれる。小学生からの同級生である三上紗也可とも不思議な縁がつながっている。一途に夢を追い続けてきた入江は、オリンピックの舞台でチャンピオンを目指す。

選手プロフィール

  • 入江聖奈(いりえ・せな)
  • ボクシング女子フェザー級
  • 生年月日:2000年1月9日
  • 出身地:鳥取県米子市
  • 身長:164センチ
  • 出身:義方小(鳥取)→後藤ヶ丘中(鳥取)→米子西高(鳥取)
  • 所属:日本体育大学 
  • オリンピックの経験:なし
  • ツイッター(Twitter):入江聖奈(@seeenaaa09)

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