【体操】内村航平、大技「ブレットシュナイダー」の成功で4大会連続五輪出場を目指す

文: マンティー・チダ

内村航平は日本男子体操界のエースとして、これまでオリンピックには2008年北京、2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロと3大会連続出場し、個人総合2連覇を含む金メダル3個、銀メダル4個を獲得した。Tokyo 2020(東京五輪)では種目別の鉄棒に絞って、4大会連続のオリンピック出場を狙っている。

■満身創痍、個人総合から鉄棒へ方針転換し五輪出場を目指す

内村はリオデジャネイロ五輪で個人総合2連覇を達成後、2017年世界選手権は個人総合の跳馬で負傷し途中棄権。2009年から続けてきた世界選手権個人総合の連勝記録が6でストップした。2019年には日本選手権の個人総合で予選落ちし、12年ぶりに日本代表から落選する。2020年からは鉄棒に絞ることを表明し、6種目で競った個人総合から鉄棒1種目でオリンピック出場を目指すことにした。

種目別の鉄棒でも、内村は世界選手権や国内大会で実績を残しているが、リオデジャネイロ五輪後の取材で、鉄棒は「得意種目ではない」と驚きのコメントをしている。小学1年の時に鉄棒の蹴上がりで苦戦していたところから、ある日誰も見ていない時にできてしまった過去がある。

「当時はゆかばかり練習していて、それが武器になっている。平行棒も技の種類が多くて、全種類しっかり練習しなければ高得点につながらない。技のバリエーションをたくさん持つ種目なので、好きですね。技をやろうと考えた時、すぐにできたのはゆかと平行棒なので」と得意種目はあくまでも、ゆかと平行棒だとしていた。

実際、内村は世界選手権でゆかと平行棒でも金メダルを獲得している。鉄棒はあくまでも「高得点が取れる種目という位置づけ」だった。では、なぜ「鉄棒なら輝ける」と考えたのだろうか。個人総合にこだわっていた頃は「6種目やってこそ体操」としていたが、リオデジャネイロ五輪以降は両肩のケガなど満身創痍だった。内村は自分の身体に限界を感じていたが、鉄棒だけは「痛みを感じなかった」のである。

「鉄棒なら結果を残すことができる」と判断した内村は、H難度(上から2番目の難度)「ブレットシュナイダー」の習得を目指す。逆さの状態で鉄棒から両手を離しながら、空中で体を2回ひねって鉄棒をつかむという大技だ。2018年のオーストラリア合宿から猛練習を積み、5カ月後の練習で成功した。2020年に出場した全日本シニア選手権で公式戦初披露をしている。

■残り2試合で大技を成功させて15点台中盤を出せるか

国際体操連盟(FIG)は2月10日、日本が体操男子個人で出場枠を獲得したと発表。これは新型コロナウイルスの影響で東京五輪予選だった個人総合のワールドカップシリーズが成立しなかったため、規定から2019年世界選手権団体総合予選の上位3カ国(男子は日本、ロシア、中国、女子はアメリカ合衆国、中国、ロシア)にそれぞれ1枠が与えられた。個人枠は種目別のスペシャリストらで争われ、内村は鉄棒でこの枠の獲得を目指している。

個人枠の選出方法は、4月の全日本個人総合選手権(予選と決勝)、5月のNHK杯、6月の全日本種目別選手権(予選と決勝)の計5試合における順位からポイントを付与される。ポイントの最上位者が個人枠代表選手として選出。内訳は1位30ポイント(2位と0.2差以上でさらに10ポイント追加)、2位20ポイント、3位10ポイント、4位には5ポイントが与えられる。

全日本個人総合選手権、NHK杯が終了し、内村は3試合でいずれも15点台をマークして優勝を飾った。3試合終了した時点で、跳馬の米倉英信も3試合で優勝をしている。内村と米倉のポイント差はわずかだ。残りの全日本種目別選手権大会で内村がポイント差を守り切れば、個人枠でオリンピックの切符を獲得することになるが、米倉にも逆転の目は十分にある。

内村には、全日本種目別選手権大会予選と決勝の2試合で確実に15点台を出すことが求められる。H難度「ブレットシュナイダー」といった離れ技を全て成功できれば、15点台中盤は可能。相手を気にせず、自分の演技をしっかりやりきることで、おのずと4大会連続となるオリンピック本番への扉が開かれるはずだ。