【体操】内村航平の背中を追いかけてきた橋本大輝、体操ニッポンの新エースとして東京五輪に挑む

文: マンティー・チダ

日本男子体操界で新たなスター誕生の予感だ。4月の全日本個人総合選手権を逆転で制し、その勢いでTokyo 2020(東京五輪)への切符を獲得した橋本大輝。決勝で獲得した88.532点は2019年世界選手権の金メダルに迫るハイスコアで、予選7位からの逆転優勝。彗星の如く現れた19歳のメダル候補は、いったいどんな選手なのだろうか。

■白井健三以来、史上2人目の高校生として世界選手権日本代表に選出

日本男子体操界は、オリンピック2大会連続個人総合金メダルの内村航平が、第一人者として長年引っ張ってきた。しかし、内村は2019年の全日本個人総合選手権予選で40位と予選落ち。決勝進出を逃したことで、12年ぶりに日本代表の座を手放し、2020年からは鉄棒に絞って東京五輪を目指すことになった。
これまで牽引してきた大黒柱が不在となり、東京五輪でメダル獲得を目指す日本体操界において、内村の後継者が必要だった。そこに憧れの存在として内村の背中を追いかけてきた橋本が、次代の新エースに結果を示す形で名乗りを上げたのである。
橋本は兄の影響を受けて、6歳から体操に出会う。中学生の段階では、全日本ジュニア選手権で19位と飛び抜けた成績を残してはいなかったが、市立船橋高校(千葉県)へ進学すると、一気に才能が開花。2年生の時に全日本ジュニア選手権、インターハイで上位へ入る活躍を見せると、アジアジュニア選手権では、種目別のゆかとあん馬で優勝。
3年生になると、ドイツで行われた2019年世界選手権で、白井健三以来、史上2人目の高校生で日本代表に選ばれ、日本の団体銅メダル獲得へ大きく貢献する。個人でも種目別の鉄棒で4位となり、橋本は世界選手権初出場ながら結果を残した。

■全日本個人総合選手権で予選7位から巻き返して大逆転優勝

高校卒業後、橋本は順天堂大学へ進学。2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響から、国内の主要3大会(全日本個人総合、NHK杯、全日本種目別)が中止となり、2年生となった今年4月に、東京五輪日本代表選考会の1つである、全日本体操個人総合選手権に出場する。
最初の種目となった跳馬は最高難度の「ヨネクラ」を豪快に決めて15点台を叩き出し、続く平行棒と鉄棒は14点台にまとめた。4種目目のゆかが終了した時点で暫定1位としていたが、あん馬で落下が続き、つり輪では伸身ルドルフで手を突くなどミスが響き、橋本は予選7位と大きく出遅れた。
予選首位の北園丈琉と、2.499点差ある中から巻き返しを狙った橋本は、決勝で驚異的なスコアを記録する。ゆか、跳馬、平行棒、鉄棒で15点台を叩き出し、予選ではミスから大きく得点を下げていたあん馬も14点台でまとめ、一気に6人を抜いて優勝。決勝のスコア88.532点は、2019年世界選手権金メダルの88.772点に迫るハイスコアだった。

■NHK杯優勝で東京五輪に出場内定…内村航平も「期待しかない」と絶賛

全日本個人総合選手権から1カ月後、橋本はNHK杯に出場、初優勝を成し遂げ、上位2人に与えられる東京五輪日本代表内定の切符を獲得した。
全日本個人総合選手権の得点を持ち越して行われ、2位に0.637点差をつけてスタートした橋本。2種目目のあん馬を14点台後半でまとめると、得意の跳馬では難度の高い「ロペス」を跳び、15点台をマーク。平行棒で着地が乱れるが、続く鉄棒では大きなミスをせず、2位の萱和磨にわずか0.136点差まで迫られたが、僅差ながら初優勝。悪いなりにもしっかりまとめて、橋本は新エースとしての存在感を発揮した。
橋本が憧れる内村は、6月の全日本種目別選手権大会に出場し、鉄棒で4大会連続五輪への切符を獲得した。その内村は橋本のことを「期待しかない」と絶賛する。リオデジャネイロ五輪で内村が、個人総合でオリンピックを連覇した頃、橋本は中学3年生でケガの影響もあり、全国大会で最下位だった。
そのどん底から5年が経過し、一気に日本のエースへ登り詰めた橋本。「高校に入ってからすごく環境が変わって、人生が180度変わったように感じる」と自分の中でも変化を感じていた。東京五輪で若きエースが躍動できるのか。これまで日本体操界を背負ってきた内村に見守られながら、体操ニッポンの威信をかけて橋本は大きなチャレンジに挑む。