佐藤彩乃:小学生時代にカヌーに魅了され、高校卒業後はスロベニアで単身修行【アスリートの原点】

恩師に誘われ、地元・秋田県の玉川で日々練習

文: オリンピックチャンネル編集部

東京五輪で初めて実施される種目となったカヌーの女子スラローム・カナディアンシングル。日本代表に内定している佐藤彩乃(あやの)は高校卒業後にカヌーの強豪国スロベニアで2年半にわたって武者修行を積み、技術を磨いた。厳しい代表選考を勝ち抜いた彼女の原点とは。

急流で水圧の強い人工コースが多いスロベニアで修行を積んだ佐藤

激しい水の流れを求め、スロラームに挑戦

1996年12月29日に生まれた佐藤彩乃(あやの)がカヌーという競技に魅了されたのは小学生の時。地元・秋田県仙北市にある田沢湖での野外イベントでカヌーに乗り、水の上から見える景色の美しさに心を奪われた一方で、もっとアクティブで、激しい動きを求めていた。

そこでスラロームに興味を持ち始めた。流れのある河川のコースを進み、ゲートを通過しながらタイムを争う競技だ。「湖では水の流れが物足りない」と感じていた彼女にとって、ぴったりの競技だった。

本格的な練習を開始したのは中学1年生の時。恩師であり、秋田県カヌー協会理事の馬場昭江さんに誘われ、地元のカヌークラブに入った。始めたばかりのころは、パドルで漕いでもまっすぐに進むことさえできなかった。それでも馬場さんは、「波の中に平気で入っていく」という佐藤の度胸を買い、熱心に指導した。

練習場所はもっぱら玉川だった。秋田県を流れる一級河川の玉川は、上流にあるダムの放水により年間を通して豊富な水が流れている。佐藤の自宅からも近く、練習拠点にふさわしい場所だった。雪国でもあり、幼少期の外遊びのなかで身につけたバランス感覚が、カヌーに取り組むうえで良い効果をもたらした。

カヌー日本代表の仲間たちと(右から2人目)。2021年2月には大分県の豊後大野市で強化合宿を実施

世界を身近に感じたオーストリア人コーチとの出会い

佐藤は高校に入るまでほとんど無名の存在だったが、中学時代からすでに世界を見据えていた。角館高等学校では、秋田県カヌー協会が招いたオーストリア人コーチの指導を受ける機会があった。同コーチがカヌー競技の本場であるオーストリアでの修行に誘うと、佐藤は「行きたい」と即答したという。当時は結局、「親に心配をかけないために」と見送ったが、高校卒業から1年後の2016年、佐藤はオーストリア同様の強豪国として知られるスロベニアに単身で渡り、約2年半にわたって技術を磨いた。

自ら望んだ武者修行の道は、事前に語学勉強も積んでいたこともあり、ホームシックにはならなかった。ただし、本場の競技レベルの高い壁にぶつかり、カヌーから離れてしまった時期がある。その時はローラースケートをするなどリフレッシュできたことで、再び競技意欲を取り戻したという。

競技レベルの高さを証明するようにスロベニアはカヌーに取り組む環境が整備されており、急流で水圧の強い人工コースが多い。渡欧後、目覚ましい成長を遂げた佐藤は、2017年に国民体育大会の成年女子スラローム・カナディアンシングルで優勝を果たすと、翌2018年にはジャパンカップを制覇。2019年には世界選手権で日本勢トップの17位という成績を残すなど選考をリードし、見事に東京五輪代表に内定した。

カヌーの本場で鍛えた実力は世界で通用する。そのパドルさばきは評価も高い。2020年2月の国際大会、オーストラリア・オープンでは準決勝まで進んでみせた。2021年夏、自身初のオリンピックで上位に食い込む可能性は決して低くない。

選手プロフィール

  • 佐藤彩乃(さとう・あやの)
  • カヌー スラローム・カナディアンシングル
  • 生年月日:1996年12月29日
  • 出身地:秋田県仙北市
  • 身長/体重:160センチ/52キロ
  • 出身校:神代中(秋田)→角館高(秋田)
  • 所属: 秋田病理組織細胞診研究センター
  • オリンピックの経験:なし

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