オリンピックの新種目として東京五輪で採用されるサーフィンにおいて、メダルを有力視される逸材が五十嵐カノアだ。本場カリフォルニアでサーフィン文化にどっぷりと浸って育った彼にとっては、サーフボードの上も陸と同様に慣れ親しんだ場所。父から譲り受けた抜群の才能、そして日本代表への思いに焦点を当てる。
元プロサーファーの父の影響で、3歳で波に乗る
五十嵐カノアが生まれたのは1997年10月1日。父は元プロサーファーの五十嵐勉氏、母もサーフィン経験者という最高のDNAを受け継いで産声をあげた。カノアという名前は、ハワイ語の「自由」という意味からつけられたという。同じくサーファーとしてその兄カノアの背中を追う弟の名も、ハワイ語の「山からの清々しい風」という言葉から「キアヌ」と名づけられた。
両親は生粋の日本人だがアメリカに移住していて、カノアと弟のキアヌはともにカリフォルニアの海に近い場所で育った。
カノアが初めてサーフボードの上に立ったのはまだ3歳の時。地元のハンティントン・ビーチで父のサーフィン姿を眺めて過ごしていたが、ついに我慢できなくなり、自らも波に乗るとすぐに虜になったという。その3年後には6歳で初めて大会に出場して、いきなり優勝を成し遂げるほど才能を開花させていた。
そしてわずか9歳の時、最年少でUSAサーフチーム入りを果たす。2009年、11歳の時にはNSSA(National Scholastic Surfing Association)主催の大会で、シーズン最多勝記録となる30勝という驚異的な数字をたたき出す。その名は全米のサーフシーンに広まっていった。
カノア少年の勢いは止まらず、14歳でUSAチャンピオンシップU−18にて最年少優勝記録を更新し表彰台の常連となると、2016年には18歳の史上最年少、さらにアジア人として初めてプロサーフィンの世界最高峰、WSL(World Surf League)によるチャンピオンシップツアー(CT)2016参戦を果たした。
5カ国語を操る「グローバルなアスリート」
アメリカで生まれ育ち、英語と日本語はもちろん、フランス語、スペイン語、ポルトガル語も加えた5カ国語を操る。頭脳明晰でまさに「文武両道」を地でいく選手でもある。15歳の時には2年飛び級で高校を卒業し、「サーフィンには頭脳も必要」という両親の教えを見事に体現してみせた。
採点競技のサーフィンにおいて、日本人は不利だという見方もあるなか、カノアは本場アメリカでも圧倒的な人気を誇る。一方で、2018年には登録籍を日本に変更。相棒のサーフボードには長年「Channel Islands」を使ってきたが、2018年になって、世界的トッププロたちからの評価が高い「Sharpeye surfboards」製に変えている。そうした変化にはやはり東京五輪への思いがあった。メディアに対し、こう話したことがある。
「自分が東京のど真ん中で金メダルを取る姿を想像したら、そっちのほうがイメージできた。自分が活躍することで、サーフィンがもっと広まってほしい」
2018年9月には日本代表メンバーとして世界サーフィン選手権に出場し、個人で銀、団体で金メダルを獲得するなど、大きく貢献した。東京五輪出場も内定している。
インスタグラムのフォロワーは23万6000人を超え、東京五輪公式クレジットカードのVISAのCMに出演するなど、知名度も急上昇中。自らを「グローバルなアスリート」と表する天才サーファーが、日本にサーフィン旋風を巻き起こす。
選手プロフィール
- 五十嵐カノア(いがらし・かのあ)
- プロサーファー
- 生年月日:1997年10月1日
- 血液型:A型
- 出身地:アメリカ合衆国カリフォルニア州
- 身長/体重:180センチ/75キロ
- 所属:木下グループ
- オリンピックの経験:なし
- 趣味:ゴルフ
- インスタグラム:Kanoa Igarashi(@kanoaigarashi)