並木月海:内山高志に憧れた格闘少女。通学に往復5時間をかけた高校時代は27戦全勝【アスリートの原点】

那須川天心と幼なじみで、幼少期には対戦経験も
文: オリンピックチャンネル編集部

ボクシングの女子フライ級でオリンピック出場を内定させたのが並木月海(つきみ)だ。自衛隊体育学校に所属する3等陸曹としての顔を持ちながら、金メダルをめざす彼女が競技を始めたきっかけは、元世界王者の内山高志だった。幼なじみのキックボクサー、那須川天心との思い出も紹介する。

日本人女子ボクシング選手として2人目のオリンピアンに内定した並木月海/時事

空手とキックボクシングを経て中2でボクシングと出合う

並木月海(つきみ)は1998年9月17日、千葉県成田市で4人きょうだいの末っ子として生まれた。

姉と兄2人の影響を受け、幼いころから極真空手の道場に一緒に通うようになった。現在も153センチと小柄な彼女は、幼稚園のころから背の順も前のほうだったというが、闘ううえで体格がハンデとなることを気にも留めなかった。「伸びないんだから悩む必要はない」と考えたというエピソードからも、前向きでマイペースな性格が伝わってくる。

幼稚園の年長時に初めて出場した大会で、RISE世界フェザー級王者であるキックボクサーの那須川天心と対戦したこともあった。試合は那須川が勝利し、その後小学校時代の対戦でも2度ほど負けたという。並木は「天心は昔から仲間のなかで一番優秀で、いつも一つ上の次元を見せてくれていた」と振り返ったことがある。

その後、小学3年生からは友人の影響でキックボクシングを始めるなど、さまざまな格闘技に親しんだが突然、中学入学と同時にどちらの教室もやめてしまった。「普通の女の子に戻りたかった」というのが理由のようだが、結局何もやらなかったのは中学1年生の間のみ。2年からは「闘争心が抑えられなくなって」ボクシングジムに通い始めた。

ボクシングは当初、フィットネス感覚で始めた競技だったが、元来培われていたファイターとしての血が騒ぎ出す。元WBA世界スーパーフェザー級王者の内山高志に憧れを抱き、彼の出身校でもある埼玉県の花咲徳栄高等学校への進学を機に、さらに力をつけていった。

高校時代は無敗。15試合がノックアウト勝利

自宅の成田市から高校までは電車で片道2時間半。毎朝4時半に起き、眠い目をこすりながら電車の中で勉強する日々が続いた。

「内山先輩のように、フットワークが軽やかでパンチ力も強いボクサーになりたい」

強い信念を貫いて練習に励み、高校1、2年生で全日本女子ボクシング選手権と全国高等学校ボクシング選抜で優勝、3年生でインターハイ優勝と、圧倒的な存在へと上り詰めた。高校3年間を27戦27勝という驚異の成績で終えている。うち15試合がノックアウトによる勝利だった。

卒業後は、オリンピック出場経験のある先輩がいる場所、さらにメンタルとフィジカルの専門家が在籍する場所という点から自衛隊体育学校へ進む。そして2018年の世界選手権では51キロ級の銅メダルを獲得、その他の国際大会にも3度出場し、すべてで金メダルと世界にその名をとどろかせている。

日本では「並木対策」に苦しみ、勝てない試合もあるが「すべての試合はオリンピックにつながっている」と、学ぶ姿勢を忘れない。「この頂を登り切りたい」。狙うのはあくまでも頂点だ。あどけなく、かわいい笑顔からは想像もつかないほど強烈なパンチで、表彰台をめざす。

選手プロフィール

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