写真: 2021 Getty Images

【テニス】錦織圭、USオープン3回戦で王者ジョコビッチに屈する…一方で新たな手応えも

文: 神 仁司 Hitoshi Ko

テニス4大メジャーであるグランドスラムの今季最終戦・USオープン(全米OP)で、11回目の出場を果たした錦織圭(ATP男子シングルス世界ランキング56位、8月30日付け、以下同)は3回戦で敗れた。錦織はこれで2021年シーズンでのグランドスラムの戦いをすべて終えた。

1回戦でサルバトーレ・カルーソ(113位、イタリア)を、6-1、6-1、5-7、6-3で破って2回戦へ進出した錦織は、USオープンの前哨戦で戦線離脱する要因となった右肩の痛みがまだ完治には至っていないことを明かした。

「肩は悪くなかったですね。毎日良くなっている中で、100%治ったかと言われるとまだわからない。今日(1回戦)は問題なかったですね。最近まで、なかなかサーブが練習できませんでした」

1回戦をストレートで勝てなかったのは、それが錦織の実力の現在地とも言える。ニューヨーク入りしてから、自分のイメージする理想のテニスと、1回戦を含めて実際にプレーしたテニスにギャップがあるかと問うと、錦織は次のように答えた。

「内容で言うと、オリンピックとかワシントンの方が、若干良かった気がしますけど、(1回戦の)1、2セット目は十分いいテニスができていました。そんなに毎週毎週どこと比べるわけにもいかないので。1回戦にしては良かったんじゃないかと思っています」

2回戦で、マッケンジー・マクドナルド(61位、アメリカ合衆国)を、7-6(3)、6-3、6-7(5)、2-6、6-3、3時間57分におよぶ激戦の末破った錦織は、3回戦で、世界ナンバーワンで、第1シードのノバク・ジョコビッチ(1位、セルビア)への挑戦権を得た。

ジョコビッチは、USオープン4回目の優勝を目指すと同時に、男子史上最多となるグランドスラム優勝回数21回と、男子では1969年以来となる年間グランドスラム達成に挑んでいる。

これまでジョコビッチと錦織との対戦成績は、錦織の2勝17敗(錦織の棄権負け2回含まず)で、錦織の16連敗中(錦織棄権負け1回含まず)。錦織の勝利は、2014年USオープン準決勝まで遡らなければならない。

7月にTokyo2020(東京五輪)の準々決勝で対戦し、2-6、0-6で敗れた錦織は、ジョコビッチへのアプローチを変えて臨んだ。

「いつもの自分の速い展開でプレーするという感じではなかった。でも、悪くはなかったですね。じっくりラリー戦をしてみようというところが、今日は良かったのかなと。ミスも誘えましたし」

この錦織の作戦によって、第1セットでは、錦織とジョコビッチが鏡を見て打ち合っているかのような錯覚に陥るのではないかと想像できるぐらい両者似たようなテニスが展開された。

ジョコビッチから20回のミスを引き出し、第1セットをタイブレークの末奪取した錦織の作戦が功を奏した形になった。

通常、ジョコビッチのようなグランドスラムで何度も優勝している選手は、大会2週目からレベルアップしていくので、3回戦から全開のテニスということはまずない。錦織の第1セットでのボールのスピードやテニスのクオリティの高さと接して、ジョコビッチはギアアップが必要であることを認識した。

「僕は彼(錦織)のゲームをよく知っています。何年にもわたって何度も対戦したからね。彼のボールのペースに順応してからは、試合をコントロールできるようになった気がします」というジョコビッチは第2セット以降ギアアップしていき、要所では時速200kmに迫るファーストサーブを打ち込んで、リターンの良い錦織からの攻勢を封じた。

「1セット目は彼(ジョコビッチ)が打ち出してきたのをミスも誘いながらプレーしていましたけど、それから彼のアグレッシブさが増してきていたので、そこを止められなかったですね。さらにレベルを上げてくる彼に対して自分がついていけなかったです」

こう振り返った錦織は、結局、7-6(4)、3-6、3-6、2-6で敗れてベスト16へ進出できなかった。ジョコビッチに対して38本のウィナーを決める一方で、57本のミスをして王者を崩しきれなかった。また、錦織のセカンドサーブでのポイント獲得率は44%で、改善の余地ありだ。

3時間32分におよんだ濃密なテニスに、試合後の勝者へのオンコートインタビューで、ジョコビッチは、錦織のテニスクオリティに驚くと同時にレベルの高さを称えた。ただ、錦織は負けたにせよ、本来ミスの少ないジョコビッチに52本のミスをさせたのは評価できる点で、今後のジョコビッチ戦に向けて試金石になったのではないだろうか。

錦織は、USオープンで大きな結果を残して、世界ランキングをジャンプアップさせることはできなかった。もちろんジョコビッチ戦でのテニスクオリティを、全試合でやるのはさすがに無理な話だが、それでも錦織が56位に留まるような選手ではないことは、彼のテニスが改めて示してくれた。新たに得た手応えを、2021年の秋シーズンで、錦織がどれだけ勝利に結び付けることができるのか見守っていきたい。